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『……そういえばまふくんってさぁ』
「はい?」
私より先に飴を舐め終わった彼が新たなお菓子を出そうと鞄の中を漁る。
頬杖を付いてその動作を眺めてたら、その視線を不思議に思ったらしいまふくんが手を止めてこちらを見た。かわいい。
『教室で女の子と喋るの?』
「え?」
『や、ちょっと気になって』
クラスの状況なんて共学の先輩後輩カップルで1番気になることと言っても過言ではない。
が しかし、私は彼が女の子といるところを今まで見たことないので聞いたことがなかったのである。
目の前の彼も彼でそんなこと聞かれると思っていなかったのか目を見開いてポカーンってしたまま。
「それって、その、あの、し、し、し、」
『し?』
まふくんがプルプル震えながら鞄から手を引っこ抜いて机に勢いよくばん!って手をつく。
そのまま鼻と鼻がくっつくくらいまで思いっきり身を乗り出してきた。近い!
「し、嫉妬って、やつですか……!!」
電気付けてないせいで国語準備室はかなり薄暗いのに、彼の目がキラキラ輝いてるのが分かる。
頬を紅潮させて嬉しそう。こういうところは年相応らしい。
『……嬉しいの?』
「そりゃあもちろん!!!!」
がたんって音を立てて椅子に戻った。
でれでれニコニコしてて楽しそう。嫉妬するだけでこんなに喜んでくれるならたまにはこういうこと言ってもいいのかもしれない。
「女の子とは業務連絡くらいしかしてないですよ!可愛い彼女がいるとは言ってあるので先輩が嫌がることはしてないかと」
『可愛い彼女……』
「へへ、実はいつも教室で自慢してます。すみません」
頬を掻いて苦笑いする姿になんとなく胸が暖かくなった。
それから思い出したかのように鞄の中からラムネを取り出して食べ始める。小学生みたい。
『かわいいねえ、まふくん』
「ありがとうございます」
『んふ、かわいい』
「かっこいいの方が嬉しいです」
そう言いながらも照れ臭そうに髪の毛を触るからそんなに嫌なわけでもないらしい。
その仕草すらも愛おしくて、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ。調子に乗った。
『まふくんは誰よりもかわいいよ』
もうちょっと照れてくれるかなぁって甘えたこと考えてニコニコしてたら、まふくんの顔からスっと笑みが消える。
あれ?って思ってたら机の上に乗ってた私の手をまふくんがぎゅうって、強く握った。
「可愛いよりかっこいいがいいって、言ってるじゃないですか」
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スピカ(プロフ) - わぁ、好きな作者さんがこんなに・・・! (2021年5月5日 13時) (レス) id: 990b6b3e69 (このIDを非表示/違反報告)
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