そそっかしいラブレター【sm】×結蓮 ページ14
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「4組、4組………」
誰もいない夕暮れの下駄箱。今日はいつも遅くまで残っている運動部も職員会議があるせいでで一律お休み。
みんな駅前のパンケーキ屋だのカラオケだの……放課後どっか寄ろうと話し合っていた。
つまり、最終下校時刻ギリギリの今、校舎内に残っている生徒なんて私くらい。
「……あ、あった!! えっと、28番は………」
事前にどこなのか確認しておけばよかった。そうすればこんなモタモタすることなんてなかっただろうに……。
人生初のラブレター。カバンの中にひっそりと入ってるそれは何ヶ月もの時間をかけて書き上げた代物。
渡す相手は男子バレー部のエース、月崎志麻先輩。
去年のバレンタインに志麻先輩がもらったチョコレートを盛大にぶちまけ、その場にたまたま居合わせた私が拾うのを手伝ったことをきっかけに知り合い、今では廊下ですれ違ったら声をかけてくれるような仲にまで発展している。
まあ、なんとも不思議な関係というのは自分でもよく分かってますよ、ええ。
上履きの上にそっと手紙を置く。明日の朝これを見た先輩はどんな顔をするんだろう。
「…………お願いします……」
誰に頼んでるのか分からないけど、両手を合わせてぎゅーっと目を瞑った。どうか何事もなく無事に…………
私の名前は悩みに悩んだ末、結局書いてない。この想いが知られたせいで関係が拗れでもしたらこれから生きていけないから。
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「……よしっ!!!」
無事に任務完了。
はやくこの場から退散しよう。ないとは思うけど、誰かにこんな状況を見られでもしたら最悪だし。
ばくばくと鳴り止まない心臓を落ち着かせるように深呼吸を一回して、歩き出した。
その時。
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「あれ、Aやん」
後ろから聞こえてきたのは、大好きなあの声。
「っし、志麻先輩!!?」
「こんなところでなにしてるん? こっち、3年の下駄箱だけど…」
「え、あ、え、えっと………さ、さようなら!!!」
「は?」
ちょっと待って、なに “ さようなら ” って!!!!
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スピカ(プロフ) - わぁ、好きな作者さんがこんなに・・・! (2021年5月5日 13時) (レス) id: 990b6b3e69 (このIDを非表示/違反報告)
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