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浦田に手伝いを頼まれて連れてこられたのは薬品棚。私が薬品苦手って知ってて頼んだよな?実験のときは毎回叫んでるもんな、私?
っていうかなんかこの辺り薄暗くない?電気はいずこ?
薬品と暗い場所のコラボレーションで出来たこの場所はまさしく対私嫌がらせゾーン。さっさと終わらせてここから逃げよう。よし、そうしよう。
薬品棚からきっかり1m離れたところから箒で床を綺麗にしていく。1mのところは私は動かず、箒だけ動かしてゴミを私の方へ持ってくる荒技で乗り切った。よくがんばった、私。
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私を地獄に叩き落とした張本人は薬品棚を水拭きしていた。よくあんなことできるなぁ……と感心半分、呆れ半分で眺めていると流石に気付いたのか、くるっとこっちを見た。
「A〜?そんなに眺めてどうしたよ」
「ん?よくそこ掃除できるなあって思っただけ」
「逆に俺からしたらなんであんなに薬品を怖がってるのか分からないくらいなんだけど」
「無理なものは無理」
「じゃあそんなAに薬品と仲良くなれるようにクイズを出してあげよう」
「待て、瓶をこっちに向けるな、やめろぉ!」
「この瓶の中身は何でしょう?ちなみに化学式はC3H8Oだよ」
浦田は瓶をゆらゆらと揺らしてさも面白そうに笑う。前世は悪魔か閻魔様かな……?ってそうじゃない、今はクイズの方に集中しないと。(一応)理系選択としては考えないと私のプライドが許さない。大丈夫、私なら多分できる。多分。
まずはさっき浦田が言ってた化学式を思い出そう。CとかOとかNとか言ってたっけ?あれ、言ってないかも?
「あと10秒。10、9、8、7、6……」
「ヘキサン」
「ぶっぶー、外れ。絶対知ってる中からテキトーに言ったでしょ。ちなみに正解はエチルメチルエーテル」
「……おっしゃる通りです。そしてどちら様でしょうかそのエチルなんとかとかいう輩は」
「それは自分で調べなさい」
「ちぇっ」
聞き覚えも見覚えも一切ないような知らん薬品が出てきて私の頭はオーバーヒート。さっきの何語?本当に日本語で使われてる言語か??調べる前から頭が痛くなってきそう。
次こそ当ててみせる!と意気込んで浦田の方を見ると、心底楽しそうな顔をしていた。でも純真無垢な楽しさじゃなくて_______たまに見せる『悪い顔』の方。
「さて、間違えたAには罰ゲームかな。ふふふ……」
「罰ゲーム?なにそれ聞いてないんだけどっ!?」
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スピカ(プロフ) - わぁ、好きな作者さんがこんなに・・・! (2021年5月5日 13時) (レス) id: 990b6b3e69 (このIDを非表示/違反報告)
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