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・ 末澤side
部長 「 という事で、今日からここで働く末澤くんだ。皆仲良くやってくれ。 」
ずっと憧れだった会社に就職して1日目のあの日。
先輩方は皆優しそうでちょっと安心したのを鮮明に覚えている。
末澤 「 末澤誠也です。よろしくお願いします。 」
「「「「 よろしくねー 」」」」
部長 「 指導につくのは…杉沢。頼めるか？ 」
杉沢 「 了解です。 」
キュッとしたつり目、下ろした艶やかな黒髪、スーツをかっこよく着こなす杉沢先輩。
今でも脳裏に焼き付いとる。
そう、俺は出会ったばかりの先輩に、恋をした。
◆
杉沢 「 …くん、末澤くん、末澤くん！ 」
末澤 「 えっ！？あっ、はい、どないしました？ 」
杉沢 「 さっきから呼んでるのに、なにぼーっとしてるの？ 」
末澤 「 すんません。それでなんですか。また倉庫？ 」
杉沢 「 んーん、さっき部長がきて、株式会社〇〇さんとこにこれもっていってって。 」
末澤 「 えぇー？めんどくさぁ。 」
杉沢 「 ぐだぐだいってないで、行っといで。 」
入社して2年。一目惚れした杉沢先輩とは、一向に距離が縮まらずにいた。
だって先輩、男関連の話持ち出すと怒るんやもん。
そりゃ縮まらんのも頷けるやろ。
ぶつくさ文句を呟きながらお使いという名の雑用を済ませる。
腹いせに、と立ち寄ったカフェでショートケーキを頼んで、少し休憩。
やってきたケーキを頬張りながら、
なんとか先輩と距離が縮まらないかと考えをめぐらす。
やって先輩、恋と仕事とどっちとるかって聞いたら絶対仕事って言いそうやもんなぁ。
どんなテストよりも難解なこの問題は、一筋縄では行かなそうや。
最後のいちごを口に含んで、会社に戻る。
末澤 「 帰りましたぁ 」
杉沢 「 おかえり、ありがとね 」
にこっと笑ってくれた先輩に、また少しどきっとする。
杉沢 「 今日は特別に私が奢ってやる。 」
末澤 「 ありがたき幸せ 」
冗談は言えるけど、どこまでも『 先輩と後輩 』の関係から抜け出せない。
どうすれば良いか考えているうちに、
足はとある人の方へと向かっていた。
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作者名：鈴川ゆら | 作成日時：2023年1月20日 21時
