片手のないあの子【東リベ】2 (ページ33)

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27-1 現代ページ33

「……いいのか?」

「何がだ」

稀咲の手からタケミチを助けだしたのは、一虎。
千冬と一虎は警察と協力し、稀咲の動向を追っていたのだ。
タケミチが目覚めるまで、鉄橋の下で話し込んでいる。
俺は硬っ苦しいスーツから軽めの服装に着替えていた。

「いくらNo.3とはいえ、ただじゃすまないだろ…」

「俺は稀咲の駒じゃねぇ」
「今東卍(あそこ)に戻ったところで、後ろ盾がある俺を殺しはしねぇよ」
「(それに、もうアソコに居場所なんてねぇからな…)」

「………」

俯く一虎を横目に肺に貯めた煙を吐く。

「痛って!」

タケミチが目覚めたようだ。

「……応急処置はした」

一虎はゆっくりとタケミチに振り替える。
後ろ姿だけを見たら場地そっくりな一虎をタケミチは最初見間違えるだろう。

「一……虎君?」
「お久しぶりです…」

一虎はあいさつ代わりに一発タケミチを殴った。
タケミチが何かを言う前に次々にボコる一虎。

「この前、こんな風に路上で女をタコ殴りにしてる奴等がいた」
「止めに入ったら、殴ってた奴等は…東卍(トーマン)のメンバーだった」
「テメェらの東卍(トーマン)はいつから女を殴る組織になった?」

一虎は座り込んでいるタケミチを見下ろす。

「テメェなんてどうでもよかった」
「アイツを」

一虎は目に溜めた涙を払うようにタケミチに背を向けた。

「千冬を助けたかった」

吸い終わったタバコを捨て火を消す。

「タケミチ」

「!!」
「……A君」

一虎に聞き取れない様に耳元に口を近づける。

「目の前の出来事が万次郎が堕ちた原因と思わないことだ」

「え……?」

「外からの敵だけがすべてじゃない」
「これ以上は俺からは話せない」

「A?」

一虎が俺の名を呼んだ。

「タケミチ、"今回の戻れるチャンスは一回きり"だ」
「それだけは忘れるな」

そう言ってタケミチから離れ、一虎に近づく。

「……もう、いくのか?」

「あぁ…」

「タケミチを頼む」

「………わかった」

一虎にも背を向け止めていた愛機(ニンジャ)に置いていたフルフェイズ型のヘルメットをかぶり、跨る。
去り際に手を振り、その場を後にする。

「(チャンスは一度きりしかないぞ、タケミチ…)」

"アイツ"と連絡したのは一度きりで、それ以降はすべて任せてある。
しかし、そのチャンスを逃せばタケミチは拘置所に隔離される。

「(頼んだぞ、橘ナオト…)」

そして俺は社会から消えた。