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次に目が覚めた時、部屋にご主人様はもう居なかった。体に掛けられていたブランケットを見て寂しさが増す。
……今日も、お仕事なのかな。
「んぅ……眠い……」
そのままご主人様の匂いがついたシーツを握り締めて、頬を表面に擦り付ける。そうすれば途端にご主人様の匂いが強くなった。
……って、ど、どうしよう!
獣人の分際で長居しているなんて怒られちゃう!もうこの部屋を出なければ……!!
そう思った私はブランケットを丁寧に畳んで書斎デスクの上に置くと、首に掛けているネックレスに繋がった鍵で部屋の鍵を閉めた。
実は、Aなら好きに使っていいよ、と言ってご主人様は私に合鍵をくださったから、私はご主人様の部屋にいつでも行き来できるのです。
たまに侍女さんとか、お手伝いさんとかに獣人のクセにって嫌な事を言われるけれど、気分が落ち込んだそんな時でもご主人様は私を必要として腕の中に収めてくれる。
だから頑張ってご主人様のお傍にいます。
私が彼に嫌われて、捨てられてもう要らないからと拒絶されるまで、ずっと。
「ご主人様は今日もお疲れ……甘いもの、食べれば元気になるかな……?」
ほんとはね、私知ってるの。
ご主人様が、この国の中でも重要な役割を担っている職業に着いている事を。だからこんなに忙しいという事を。
……なのに、私のお相手をしてくださってる。
顔色の悪さも、目の下にうっすらと浮かぶ隈も心配で心配で仕方ない。だから、私がお相手をして少しでもご主人様を癒すことが出来るのなら嬉しいけれど、でもそれは本当に癒せてるのかなって、不安になる。
だって、日に日に顔色が悪くなっていくのが、目に見えるほどの変化を齎してるんだもん。
ぼーっとしている事が増えたし、帰ってご飯も食べずに眠る事も増えた。
「(……街に、降りようかな……)」
外に出ると私を見る目は『汚らわしい獣人』になるから、ご主人様は私が傷つかないようにってあんまり外には出ないように言ってた。
けど、私だって役に立ちたい。
ご主人様を、助けたいの。
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関西風しらすぅ@坂田家(プロフ) - めっちゃ好き……遅れてすみません…大型コラボおめでとうございます… (2019年11月15日 20時) (レス) id: 101a3e5494 (このIDを非表示/違反報告)
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