【歌い手】私の全てを受け入れて。ver.A【大型コラボ】 (ページ17)

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「へぇー、それがまーしぃの歌い手になるって決めたキッカケ？」

「あかん…俺涙で前が見えへん…ズビー！」

「坂田汚いわ…。だけど思っとったより感動的でしたね」

『…おん。俺の親友はな、俺のサインまで考えてくれてな、』

そういってもう掠れてしまった落書きのゲーム機を鞄から取り出した。

今となってはアイツの形見となっている。

「うわ、DS！懐かしいわぁ…」

「親友のサインそのまんま使ってんだな、おもしろ」

グラスに入ったお酒を一気に体に流し込んでいるとセンラさんが「ビデオないん？」と尋ねてきた。

「あ、それ俺も思った」

「見たい見たいっ」

『ないで？削除したし』

当たり前のように言い放つと真っ先に坂田が「えぇっなんでなん？？」と間髪いれず聞いてくる。

『元々削除された項目に入ったったし』

「えぇ、復元とか出来ないタイプのやつだったん？」

『出来るには出来たけどアイツは削除してほしかったから項目に入れとったわけやし。それに、』

「それに？」

『俺が覚えてれば、俺の心の中にあれば、ええから』

うらたさんは納得がいくように頷き、坂田は小難しそうに首を捻り、センラさんは感傷に浸る中、坂田は思い出したように言った。

「そういえばAさんは進路希望なんて変えたん？」

『あぁ、それは…』

下にスクロールしていくと驚きを通り越して呆れが湧き上がってきた。

ついでに口から低い声が自然と出た。

[櫻井 A]

「…え、それだけ？」

『おん。アイツの名前があっただけや』

「んんーー？？むずっ、わからん！」

「一体どういうことなんやろ…」

『さぁ？死んだアイツにしかってやつやな』

閑散とした雰囲気を出していた部屋は数分と経たずにお酒の力で騒がしくなる。

開け放たれた窓辺には季節外れの可憐な桜の花びらがひらりひらりとその場で舞い、吹いた風でどこか宙へと消えていった。