jungkook ページ45
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週末、ただ買い物に出掛けただけだった。
いつも通りフラペチーノを買って、それを片手にスマホのロックを解除する。
Aからカトクの返信はまだない。
俺は一人でショッピング街を歩く。
そこで見てしまった。
別に最近何か悪いことをした覚えはない。
特に何の心構えもなく見つけてしまったそれは、自分の心を抉るには最適の凶器だった。
買い物を続ける気力が起きなくて、その足でジミニヒョンのバイト先へ向かった。
俺は適当に空いている席で、オーナーがサービスしてくれたジュースを飲む。
無心でストローを咥えていたら、気付いたらグラスの底が見えていた。
「お待たせ。ほら、何か話があるんだろ?」
そう言いながらジミニヒョンが俺の向かいの席に座る。
バイトが終わり、エプロンを脱いだ彼は、疲れているだろうに笑顔を忘れていなかった。
俺はヒョンに労いの言葉を掛けることすらできなかった。
院生にもなってバイトをする暇があるの、と聞くと彼は実は全然暇ではないんだよ、と笑って言った。
じゃあどうしてバイトしているの、と聞くと、俺にもいろいろあるんだよ、と彼は答えた。
いろいろって何。どうして俺に教えてくれないの。
何もかも、思い通りにならなかった。
自分が親しいと思っている相手が、悉く自分の欲しい答えをくれない。
「ジミニヒョン。俺ってかっこいい?」
そう聞くと、ジミニヒョンは一瞬驚いたが、すぐに答えた。
「何言ってるんだ。おまえはかっこいいよ。俺が知ってる限り一番かっこいい」
そこらの芸能人なんかよりもな、とジミニヒョンが嘘偽りなく言っているのがわかった。
でも俺は納得できなかった。
ジミニヒョンに今日見てしまったそれを伝えた。
Aがユンギヒョンと二人でショッピング街を歩いていた。
それだけだったらよかった。
Aの服が、いつものラフなそれと違っていた。
ワンピース姿のAなんて、俺も見たことがなかった。
学校に行くときも、休日も、スカートすらなかなか履かない彼女が、ワンピースを着ていた。
化粧も髪も靴も鞄も何もかも、手の入れ方が明らかに違っていた。
それなのについ先日Aに会ったばかりのユンギヒョンが、お洒落を身に纏った彼女を横に連れて歩いていた。
その意味を理解なんてしたくないけれど、考えなくたってわかった。
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作者名:yurameku | 作成日時:2020年6月29日 15時