you ページ44
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その後、ユンギさんは車で私を自宅まで送ってくれた。
辺りはすっかり暗くなっていた。
家の前で私を降ろすと、「それじゃあ、また」、と一言、彼は車を発進させた。
彼の車が見えなくなるまで、私は目で追い続けた。
玄関に入ると、母が待ってましたと言わんばかりにキッチンから出てきた。
母は夕飯の準備をしていたのだろう、私が数年前に母の日にプレゼントした小花柄のエプロンをつけていた。
「もしかして、今日デートだったの？ そうなの？」
嬉しそうに言う彼女に、私は小さく頷く。
私の反応を見て、彼女は更に高い声を上げる。
「まあ〜〜〜！ Aちゃんにもついに春が来たのね〜〜！！
どうしましょ、そのうち結婚なんてしちゃったりして、まあ〜〜〜！！」
などと一通り大きな声で言った後、
「あら、こんなことお父さんが知ったら焼きもち焼いちゃうわ。お母さんとAちゃんの秘密ね」
と言いながら、口の前に人差し指を当てて、しーっとしてきた。
お父さんは仕事でまだ帰ってきていなかった。
自室で、ユンギさんがくれたCDを再生する。
気持ちは昂ったままで、なかなか収まる気配がなかった。
彼の曲を聴きながら今日あった出来事を反芻していると、突然スマホが鳴った。
電話だ。
画面を見るとそこには
「ミンユンギ」
と表示されていた。
慌てて音楽を止め、通話ボタンを押す。
「は、はい！ なんでしょう！」
スマホを耳に当て、若干裏返ってしまった声でそう言うと、向こうから声が聞こえてくる。
さっきまで聞いていたはずの低い彼の声は、電話越しに聞くとさらにかっこよさが増してドキドキする。
「いや、大した用じゃないんだけど」
まぁ、なんだ、その、と若干口ごもる。
今彼は自分の片手を首の後ろに回しているんだろう。
そして耳は真っ赤に違いない。
そう想像しながら言葉の続きを促すと、少しぶっきらぼうに彼は言った。
「今日はありがとう。
あと、今日の服似合ってたし、
その、
･･････可愛かった」
それじゃあ、と言って私がお礼を返すまもなく一方的に電話を切られた。
え。
何いまの。
可愛いって言った？
え、そのためだけにわざわざ電話してきたの？？
驚きすぎて、スマホを落としかけた。
通話履歴が表示されている画面を見て、私は呆然と呟く。
「ずるい。それはずるいよ、ユンギさん･･････」
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作者名：yurameku | 作成日時：2020年6月29日 15時
