you ページ42
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どこに向かってるんだろう。
ユンギさんのことは信用しているものの、行き先を告げられずに進む車に乗せられ、少しだけ不安になってくる。
運転している彼の横顔を見ても特に変化はなく、私の視線には気付かない。いや、気付いているけど無視しているのかも。
高速道路には乗らず、下道をそのまま一時間近く走っていただろうか、気が付くと日が少し傾き始めていた。
車窓からの眺めが都会のそれとは変わり、郊外の住宅街の風景になっている。
マンションと立ち並ぶ一軒家が視線を横切る。
自転車に乗った子供、買い物袋を引っ提げた女性。
それらを横目に、私たちは通り過ぎる。
ユンギさんの方を向いて、私はようやく尋ねた。
「あの、どこまで行くんですか」
声から少し不安が漏れ出ていたのだろうか、ユンギさんは私の方をちらっと確認し、また前方の道に視線を戻して答えた。
「あともう少しで着く」
ユンギさんの言っていたとおり、その会話からすぐに目的地に到着した。
そこは見晴らしのいい高台の公園で、地元の人専用のデートスポットといった所だった。
私たち以外の人はいないようだった。
昼間の喧噪とは打って変わった静かな場所に、今更だが照れという感情がこみ上げてくる。
今、私はユンギさんとデートをしている。
高台を吹き抜ける夕方の風は、木々を揺らし頬をなでつけ、とても心地よかった。
二人で公園をゆっくりと歩きながら、小さな展望台の傍まで行く。
展望台には入れないらしくて、チェーンで封鎖されていた。
その横にあるベンチに二人で腰を掛ける。
初めて会ったあの日のバス停のことを思い出した。
小さなベンチに二人で座ったあの日、まだお互いの名前も知らなくて、ユンギさんは私もペットのお墓参りにきたのだと勘違いをしていた。
二人の間の沈黙を田舎特有のセミの合唱がかき消していたあの日。
まさか二人でこんな場所に来るようになるなんて、思いもしなかったな。
そんなことを考えていると、ユンギさんが口を開いた。
「あの日もこうしてベンチに座ってたな」
はっ、とユンギさんの顔を見る。彼も同じことを考えてくれていたのだ。
高台から見える街の景色を眺め、彼はずっと昔の思い出をもう一度確かめるような横顔をしていた。
私もその景色に視線を戻す。
ユンギさんが連れてきてくれたこの場所を、ユンギさんの目にも映っているこの風景を、目に焼き付けようとした。
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作者名：yurameku | 作成日時：2020年6月29日 15時
