you ページ34
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それから連日、もとから頻繁に私の店に来ていたジョングクだったが、ジミンさん目当てに更にお店に顔を出すようになった。
ジミンさんも可愛い弟の来店が、仕事中の癒やしになっているようだった。
天使店員(ジミンさん)がイケメン後輩とつるんでいるという噂がSNS上で広まり、二人を目当てに来店する客が増え、オーナーも願ったり叶ったり、という感じだった。
なんか自分が支えてきた店を、ちょっと乗っ取られた気分。
そんなことを思いながら、ピッチャーでお客さんの空になったコップにお冷やを注ぐ。
ぼーっと楽しげに話している二人の様子を見ていると、不意に下方から声をかけられる。
「あの・・・・・・、店員さん? 大変なことになってます」
へ? と声を出し、自分の手元を見ると、コップに注いでいたはずの水が机の上にこぼれ、水浸しになっていた。
男性客は自分が読んでいた本を持ち上げ、水がかからないようにし、その水が自分の身体の方に向かってどんどん浸食してきている様を眺めていた。
「す、すみません!! 私ぼーっとしちゃって!」
慌てて机を拭き、謝罪する。
ジョングク達の様子に気を取られすぎた。
それに対してその男性客は怒っている風ではなく、逆に面白がっているようだった。
「大丈夫ですよ。いつもご苦労様です」
えくぼが魅力的な笑顔で言われて、胸をなで下ろす。よかった、怖い人じゃなくて。
常連さんのその人は、いつも高そうなスーツに身を包み、本を読むときは眼鏡をかけている。
いかにもいい育ちを匂わせるその背格好に惹かれている客人も多そうだ。
そして彼は長身で足が長すぎて、足が机からはみ出ていた。
これ一応二人席なんだけどな、と思いながら、彼にこっそり足長お兄さんというあだ名をつけた。
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作者名:yurameku | 作成日時:2020年6月29日 15時