you ページ28
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カウンターの向こうで、オーナーがにやついているのが気配で分かる。
そりゃそうだ、だって私がジョングク意外の男と一緒にお茶してるんだから。
店変えましょうか、という一言を言いそびれて早一時間、口数少ない彼と一緒にお茶を飲んでいる。
いや、正確にはお茶ではない。私はココア、彼はアイスコーヒー。
話題は本当に他愛もないものだった。
ユンギさんはあまり自分のことを喋ろうとしなかった。
意外に話をふってくるのはユンギさんからで、それはどれも私に対する質問だった。
私の専攻だとか、どんな幼少期を過ごしたのかとか、何故大邱にお墓がとか、そんな感じ。
あとはジョングクとの出会いとか、かな。
ほかの大学はどうか知らないけど、うちの研究室はごく少人数だったから、高校も同じだったジョングクとよく話すようになるのは必然的だった。
その話をすると、ユンギさんは「そっか」とまた一言返すだけだった。
さっきからずっとこの調子である。
質問をされて答えても「そっか」とか「へぇ」で終わり。自分の話は基本しようとしないし、私が「ユンギさんは?」と聞くと一言二言でまた返されるだけだった。
話が広がりやしねぇよ。
どうしたもんかな〜と思っていると、にやにや顔のオーナーが近づいてきた。
「こほんっ。えぇと、Aちゃん。ちょっといいかな」
いいタイミングなのか悪いタイミングなのかわからなくて「えぇ、まぁ」と答えると、オーナーの背中から一人、見知らぬ男の子が顔を出してきた。
え、誰。と目をぱちぱちさせていると、その反応を楽しむかのようにオーナーが言った。
「実はね、明日から一緒に働いて貰うアルバイトの子なんだよ。契約の関係で今日顔出して貰ったんだけど、Aちゃんもいるからついでに顔合わせってことで」
ほら、自己紹介して、とオーナーに促され、新顔が私の前に立つ。
「えっと、僕パクジミンです。駅前の大学で院生やってます」
よろしくね、と手を差し出してくるジミンさんは愛嬌たっぷりのとっても可愛い
笑顔をしていた。
「よろしくお願いします。駅前のってことは、同じ大学ですよ!」
私四年です、というとジミンさんは「おっ、じゃあ僕の後輩か〜」と嬉しそうに言った。
「大学では後輩だけど、ここでは先輩だからね。明日からはAちゃんに仕事教えて貰ってね!」
オーナーはそう言いながら、ジミンさんの背中を叩いた。
オーナー、それは押しつけでは??
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作者名:yurameku | 作成日時:2020年6月29日 15時