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ある晴れた夏の日だった。

強い日差しに照りつけられ、自分の影が黒くはっきりとアスファルトに映し出されている。


山の向こうには、積乱雲がもくもくと発達している。



夏特有のその景色に浸れるほど、自分には余裕がなかった。


暑い。暑すぎる。


自分の働く店の広告が入ったティッシュを駅前で配り、体力がほぼゼロの状態でバスに乗って、大邱の田舎町まで来た。
バスの中から知らないうちにできたお店の並びを眺めながら、幼い頃に思いを馳せた。

大邱は私の故郷で、私が九歳まで過ごした場所。今はこんな日くらいしか帰ってこれないけど。



今日は両親の命日だった。



六歳の時に実の母親が癌で亡くなり、それから三年間、父は男手一つで私を育ててくれた。

そんな父は私に弱いところを見せないようにしていたのか、私の前で泣いたのは、母のお通夜の時だけだった。

そして母の後を追うように、母が亡くなったちょうど三年後に不慮の事故で父は命を落とした。

最初は父が自ら命を絶ったのかと思ったが、相手方が十割過失の本当に偶然の事故だった。




それから数年は親族の家をたらい回しにされ、今はソウルに住む遠い遠い親戚の元に養子として引き取られ、暮らしている。
子供に恵まれなかった新しい両親は、実子のように私を可愛がり、この歳まで育ててくれた。

彼らには本当に感謝している。




両親のお墓がある霊園の最寄りのバス停に着くと、どうやらいつの間にか乗客は私だけになっていたらしい。

寝ぼけ眼でバスを降り、年に一度来るこの道を歩いて行く。


ふと道の脇に目をやると、男が一人ベンチに座っていた。


一枚の写真を片手に、じっとそれを見つめている彼は黒いTシャツに黒のスキニー、黒のキャップを被っていた。

一言で言えば、怪しかった。



田舎のこの町に不釣り合いな格好をしている彼は、私の存在に気が付き、すぐさま写真をスキニーの小さなポケットに突っ込んで歩き出した。

木陰で座っていた彼がひなたに出ると、彼の肌の白さに日光が反射し眩しかった。

すると彼が慌てて突っ込んだ写真が、ひらひらと地面に落ちたのだ。





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作者名:yurameku | 作成日時:2020年6月29日 15時

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