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「ここは……」

落ちた先も上と変わらず、屋敷の中だった。暗い色の、少し古くなっているフローリングは元いたあの場所でも見ていた。

見上げて分かったが、やっぱりかなりの高さがあった。あんな高さから落ちて来たのか……と考えただけで恐ろしい。もっと高かったら、きっと全身打撲どころじゃ済まなかったかもしれない。

そんな事を考えつつ、しばらく享くんと二人でひたすら長い廊下を歩いていた。その途中のどこにも扉はない。
ただ黙って、あかりの一つも灯っていない暗い廊下を慎重に進んだ。

よく見えなくて危ないからと手を差し出せば、享くんはひとつ首を傾げたものの抵抗することなく俺の手を取ってくれたので、今現在まで俺は右手を享くんの左手と繋いでいる状態だ。

暗く静かな廊下に、木の軋む音だけがやたら大きく響いて聞こえていた。

一本道といっても、さっきの穴みたいに何があるか分からない。俺は緊張を抑えるように繋いでいる手とは逆の手を胸の辺りの位置にやり、自分よりもサイズの大きいパーカーの一部を握りしめていた。
多汗症気味なのもあって少し汗をかいていたかもしれないし、こう考えてみると流石にかっこ悪かったかな。

やがて遠くに、白い洋風の格子戸が見えてきた。大きな扉の先も、また灯りはないようで薄暗かったけど。

享くんと顔を見合わせつつその大きな扉の前まで来ると、俺はその開き戸に手を掛ける。大分立て付けが悪いのか、かなり力を込めてようやく開いた。

そして、今。
見渡す限りの本、本、本。とんでもなく高い天井の、そのスレスレまでの高さがある木造の本棚にぎっちりと本が詰め込まれている。
そしてそれが、前にも右にも左にも、所狭しと並んでいた。

享くんが興味を示したのか、部屋の中を見渡す。

「図書室、でしょうか……本が、本当に多いですね……」
「う、うん、そうだね……」

ここまでの道のりに、別の部屋はなかった。あの穴がここに降りるためのものだとするなら、ここは図書室というよりも、立派な図書館と言った方が合っている気がする。

これだけ本棚が高いのだから……と視線を動かす。すると思った通り、考えるまでもなく本を取るために使うのであろう2連梯子が、部屋の隅の方にいくつか存在した。
気絶して目覚めた時確認したけど、あの穴は着地した部屋の、随分と壁際の方に位置していた。とすると、やっぱり梯子を使って降りることができるように、と考えるのが普通だと思う。

俺が独り考察に耽っている間に、享くんは本棚の一つに駆け寄っていた。それにようやく気がついて、慌てて小走りで駆け寄る。

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作者名:褪紅 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年5月17日 7時

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