検索窓
今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:8,886 hit

ページ40



″本当に、帰りたいと思ってる?″

突然のおかしな問いかけに、顔を見合わせる子。首を傾げる子。次の言葉を待つように、黙って私を見つめる子。反応は様々だ。

「んーー、それってー、どういうイミ?」

三羅くんが明るく弾むような声色で言う。その声は、なんだか今の空気感から少し浮いているように聞こえた。

「本当に帰りたいと思ってるんだったら、どうして不安じゃないの?今がどういう状況かも分からないのに、カスミちゃんが言う出口が本当にあるかも分からないのに、なんでこうやって、笑ってられるの?」
「それは──」

私の言葉に咄嗟に反応した萌音ちゃんが言い淀む。

「私は……私はね、みんなに笑っていて欲しいって、思ってるんだよ。でもね、違うの。ここでこうやって笑ってるのは、違うんだよ。

うまく言えないけど……私はみんなでこの夢の中から無事に脱出して、それでね。
みんなの家族や友達や、そういう大切な人と一緒に、笑っていて欲しいって思うの。そのためには、みんなでこの夢から出る方法を、一秒でも早く知らなくちゃならないと思うんだ」

「咲楽……」

Aくんが私を見つめている。目が合うと、彼は一拍置いて頷いた。

「そうだな。……咲楽の言うことは間違ってないと思う。どんなに楽しかったとしても、家族にも友達にも会えずにずっとここにいるなんて、閉じ込められたままだなんて……そんなの、幸せじゃないよな」
「そうヨ!ワーも早くお家帰って店の手伝いやるネ」
「あたしも……あたしも、希和と四葉……友達のために!ここから、帰らなきゃ!」

明聖くんと千鶴ちゃんも迷いのない口調で言った。彼らが言い切ってくれたおかげで、みんなも頷き出す。

「ここでこうやってちゃ、駄目だよね。よーし、ゆず!今すぐ探索にレッツゴー!」
「わわっ、萌音!私達二人だけで出ても意味ないってばー!絶対ただの散歩になっちゃうし!」

萌音ちゃんがじゃれるようにして、後ろから柚希ちゃんに抱きついた。

「それに、小さい子達だけで歩き回るのは危険だよ。……って言っても、ここには俺を含めて18歳までの子しかいないみたいだけど……」
「でも、ワーは小さい奴らよりずっと力あるネ!お前も背高いからこいつらのこと見るネ」
「う、うん!それは、勿論」

聡迷くんの背中を力強く明聖くんが叩く。みんな、すっかり思い出してくれたみたいだ。そうだよね、みんな、それぞれの為に帰らないといけないんだから。

「……帰っちゃうの?」
「え?」

ぼそりと後ろから呟きが聞こえた気がした。
振り返れば、そこにはかえでちゃんとゆんちゃんの姿。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (53 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
12人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:褪紅 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年5月17日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。