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「そんなこと言わないで!お姉ちゃんは酷くなんかないよ」
かえでちゃんが必死な様子で言った。
「私、すっごく嬉しかった。こんなに優しい人がいるんだって……お姉ちゃんがいたから、私、お腹空かなかったよ。私が元気でいられるのは、お姉ちゃんのお陰なの」
「だからありがとう」とかえでちゃんが笑った。
「かえでちゃん!なんていい子なの〜!」
「わっ、お姉ちゃん!苦しいよ……!」
そう言いつつ、かえでちゃんも抱きしめ返してくれる。そんな私達を見て、輝月くんが笑った。
「そっか、咲楽はかえでを助けてくれてたんだな。七瀬からもお礼を言わせてくれ!ありがとう、咲楽!」
にかっと屈託のない笑みを輝月くんが浮かべる。そんな彼に、Aくんが問うた。
「えーっと、今の話だけで大分衝撃的なんだけどさァ……結局、輝月はその子とどういう関係なんだ?」
その声に輝月くんが思い出したように言った。
「ああ!悪い悪い!七瀬はかえでの親戚なんだよ!よく一緒に遊んでたんだ」
「へえ!そうなの!私もね、この子……ゆんちゃんとは従姉妹なの!輝月くんとかえでちゃんみたいに、よく一緒に遊んでたんだよ!」
私がそう言ってゆんちゃんの肩を叩くと、彼女は緊張した様子で自己紹介をした。
「かかっ、柏元ゆんなです!小学五年生です!かえでちゃんとは、ここで気がついたときから一緒で……今は大事なお友達です!」
わたわたしつつもはっきりと言うゆんちゃんに、かえでちゃんが目を見張る。
「ゆんなちゃん……かえでのこと、お友達だって言ってくれるの?嬉しい……」
「よろしくな、ゆんな。かえでと仲良くしてくれてありがとう!それにしても、こんな偶然あるんだな」
「えへへっ、ホント、世間って狭いねえ」
笑い合う私達に、黙って聞いていたしるべくんが口を開く。
「親戚の子と再会できたみたいで良かったよ。オレは鳴吠しるべって言うんだ。よろしくね、ゆんなちゃん、かえでちゃん」
「は、はい!」
ゆんちゃんが返事をする。かえでちゃんも頷いた。
「って、さっきから七瀬達ばっか騒いでたよな!?悪いな、しるべ、みんな」
申し訳なさそうに言う輝月くんに、しるべくんがにっこりと笑った。
「ううん、大切な人と会えたんだから、当然の反応だと思うよ。気にしないで」
「しるべくん……優しいなあ〜……」
ひとりごちる私を微笑を湛えたまましるべくんは一瞥した。そして、また口を開く。
「それじゃあ、また先へ進もうか。みんな、はぐれないようにね」
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