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「カスミッ!?」
私に突っかかって来ていた彼は、カスミちゃんが来た途端に何処か挙動不審になる。カスミちゃんは何も気にしない様子でふふっと彼に笑いかけた。
「や、守くん。さっきぶりね」
「なんで、やっ……いや、どうかしたのか?急に現れて……」
一度息を置いて、守というらしい彼はカスミちゃんに訊ねる。なんだか、態度が丸くなった気がするわね。カスミちゃんには敵わないのかしら。
「そう、それだよ」
思い出した、と言わんばかりにカスミちゃんは私と彼を交互に見て言葉を続ける。
「なんで喧嘩しちゃうの。出会って5分もしないうちに仲違いなんて信じられない」
「それは違うわよ、カスミちゃん。『仲違い』というのは元来仲が良かった人同士の仲が悪くなる事を指す言葉よ。この場合には適切な単語ではないわ」
「大事なのはそこじゃないの!」
あっけらかんとした様子の私を見て、カスミちゃんはむっと表情を変えた。
「だって、何でも何も無いじゃない。私と彼の相性が悪かった。それだけの事よ」
「大人気ないと思わないの?」
「あんな言い方して」と付け加え、こてん、とカスミちゃんが首を傾げて目を覗き込んでくる。その顔はまだ険しいままだ。
蜂蜜色の目を見つめ返しながら、「心外ね」と口を開く。
「私は嘘が嫌いなだけ。だから正直に言っているまでよ。それから、私はまだ未成年よ。『大人気ない』というのは成人、つまり本当の大人に対してのみ使う言葉で──」
「あー、もう!織慧ちゃんのそういうところ嫌い!」
言い終わらない内にふいっとカスミちゃんが顔を逸らした。あら、むくれてしまったかしら。
「細かくてごめんなさいね、でも言葉の乱れってどうしても気になってしまうの」
「まあ、そういうお家柄で育ったって言ってたし、仕方ないとは思うけど……でも会話のテンポが悪くなるからあんまり口出ししないで」
じとっとカスミちゃんが見つめてくる。ふふ、いじらしいわね。
と、突然守という彼が私と彼女の間に割り込むようにして、ずいっと身を乗り出して来た。何だか不機嫌そうな顔ね。
彼は私には目もくれず、カスミちゃんに呼び掛けた。
「カスミ!その……他の奴ら、どこ行ったんだよ。お前なら知ってるんじゃないか?」
「んー……知ろうと思えば知れるけど、今は知らなーい」
ゆるゆると首を横に振り、カスミちゃんは何処か投げやりな返答をした。彼女の反応を受けて、彼は分かりやすく肩を落とした。が、すぐに顔を上げ、再び口を開く。
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