魔天使マテリアルエピソード2nd ～揺らぐ陽炎～ (ページ12)

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3.困惑の日々ページ12

夜。

(どうして…なんで？)

リオはサーヤの部屋の扉に座り込んでいた。

(闇って……どうして…？？)

泣きたい…わけではなかった。
混乱して、どうしていいのかわからない。

(わからないよ)

わからない。わからない。わからない、わからない、わからないわからない……

「リオくん？」

「！！サーヤさん！」

「どうしたの？顔色悪いよ？」

サーヤは心配そうにリオの額に手を当てた。

「熱…はないかな。何かあったの？」

「……」

血も繋がっていないのに、こうやってサーヤはいつも優しくしてくれる。

「あの、実は__……」

「リオくん、私の部屋で話そうか？」

レイヤやルナが聞いていい話なのか。
そう思ってサーヤは気を使ったのだろう。

「ありがとう、ございます」

小さくリオは頷いた。

☆ ☆ ☆ ☆

サーヤにはルナが話したこと、全てを話した。

「話してくれてありがとう」

サーヤの表情には、色々な感情が滲み出ていた。

やっぱり、という納得する気持ち、どうして、という驚き、そして…

「じゃあリオくん、私も一つ話して置こうかな」

「………？」

「私の、お兄さんの話」

リオはサーヤ達の生い立ちは知っていたが、それ以上は知らなかった。

お兄さん…それって。

「ユウヤ…さんのこと？」

呟くようにして聞くと、サーヤは微笑んで首を一つ、縦に振った。

「私のお兄さんは、闇の力を持って、どんな気持ちだったんだろうなって、今でも考えるんだ。
嬉しかったかな、悲しかったかな。
レイヤくんの体を使うのは、それは絶対嫌なんだけど、それでも本当は優しい人だったんだって思う。
最後には私を守ってくれた。それに」

サーヤはそこで言葉を切り、リオはサーヤを見上げた。

「私達は魔界で、沢山のことを学んだんだろうな…
風の一族の嵐姫、エアリルと一緒に戦った。
お父さんはお母さんをずっと守ってた。
きっと、悪魔も、マテリアルも、どんな人も、力とかじゃなく心だと思うんだ。
私達は昔、気遣いのつもりで隠して、後悔した。
話しなさいとは言わないけど……ルナちゃんによく聞いて、もう一度話し合ってみてね」

ユリが繭の中で眠りにつき鳴神が力を失った戦い。

サーヤ達の兄、ユウヤの最期。

魔界で出会った風の一族。

魔王である父が守っていたもの。

十数年前の記憶が蘇る。

辛いこともあったけれど、大切な思い出だ。

久々にみんなに会いたい、と思った。