揺らぎ【赤】

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冷静な口調になるとき程、心はざわついていた。


「幼馴染って、いつからだったっけ？」
「ちゃか？ちゃかと私は中学からずっと一緒だよ！」
「恋愛感情とかなかったの？」
「私のタイプに見える〜？真逆よ、真逆！」
「ふふっ、なら普通に恋愛相談とかしてたんだ」
「そうそう！お互いマジで真剣な話とかするのよ」
「じゃあ今まで、体だけの女の子とか結構いたでしょ、宮近くん」


私の言葉に、サヤカちゃんはまたもや固まってまってしまった。

無言は間違いなく、肯定だ。

誘導したみたいで申し訳ないけれど、ずっと気になっていたことだった。



「でも、私、てっきり…」


小さな声でつぶやいたサヤカちゃんが、百面相をしている。



「そんなに悩まないで、ありがとうね」


文句も言わず、求めもせず、軽くてふわふわした自分を演じ続ければ、このままの関係でいられるだろうか。

それとも、何食わぬ顔で隣に行けば、彼の体だけでもつなぎとめることができるのだろうか。


「でもね、私思うの」
「うん？」
「Aちゃん、絶対ちゃかに気持ちを伝えたほうがいい」
「…そうかなぁ」
「今のままは絶対、お互い良くないと思う」


サヤカちゃんは、いつになく真剣な顔をしていた。









まだ賑やかな繁華街を歩きながらサヤカちゃんの言葉を思い出す。

今まで感じたことのなかった、友達、恋人、どの言葉でも表すことができない、この関係をハッキリさせたいという気持ち。

彼女の言葉が、背中を押してくれたのは確かだった。




既読をつけたまま返信していない画面を開く。

思い切って通話ボタンを押した。

静かなコール音だけが夜道に響く。

その日、私のかけた電話が宮近くんにつながることは無かった。

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