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「のめのめぇ!」私を煽りだすもんだから「いやグラス空です」そう言ってたしなめる。
突然テンション上がるじゃん…。
失礼かなと思いつつ、テキトーにあしらえてしまう。
そんなところが彼の魅力なのかもしれない。
初対面ながらにそう思った。
ふと、バーカウンターの方に目を向ける。
奥の黒いソファに、センターパート黒髪、白い歯がまぶしいイケメン。
その隣には、黒のバケハをかぶる男の子、表情は良く見えないのに。
ざわめきの中で、すうっと彼に焦点が合っていくような感覚。
眠たげなまぶたの中で、きらりと光る瞳が真っすぐにこちらを捉える。
いや、見たのは私の横のウミくん?
ぐっと奥の奥を掴まれたように息が詰まる。
目を離すことは叶わないのに、今すぐ逃げ出してしまいたいような、でも、ずっと見ていたい。そんな不思議な気持ちになる。
頭に血が上って、耳が熱い。
ふっと彼の隣の女の子がそれを遮ったことで、その糸は途切れた。
数秒間、息をとめていたことにようやく気付く。
目の前のグラスを手に取って、空なことを思い出し、またテーブルに置いた。
意味もなく視線を右往左往させてしまう。
彼の名前はなんだろう。
真っ白な肌に大きな瞳が脳裏に焼き付いて離れない。
でも、話しかけるほどの自信も勇気も持ち合わせていない。
その後も、何度か目が合った、気がした。
中学校の時、クラスで気になっている男女が、ついお互いを目で追ってしまうような。
そんないじらしさも、この喧騒と照明に溶かされて消えてしまうのが少し残念で。
彼の周りは常に賑やかだった。
お手洗いに行ったウミくんも、いつの間にか中央で女子に囲まれている。
ライトの当たるところが似合うなんて、初めて抱く感情。不思議な人だなぁ。
「助けて」の視線には、まんざらでもないでしょうと思ってしっかり無視を決め込む。
そんな彼を横目にようやく重い腰を上げて、バーカウンターへ向かった。
手前で立ち止まり、何を飲もうか考えていると
『すいません、俺、モヒートで。あなたは…どうします?』
後ろから声がかかって、振り返るとあの黒い帽子。
一歩距離を縮めてこちらを見ながら問いかけてきたのは…。
予想外の登場に、頭が上手く働かない。
「あ、じゃあキールで…」
驚きながらも条件反射でバーテンに伝える。
こんなこと、期待してしまう。
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N11(プロフ) - kiwiiさん» すみません、返信が遅くなりました。kiwiiさんと共に完結を迎えられて嬉しいです。一番大切なのはキャラクターへの愛かもしれませんね。この作品の宮近くんを愛してくれてありがとうございました。ご期待に添えるよう次回も頑張ります。引き続きよろしくお願いします! (2021年2月8日 11時) (レス) id: 022d617d7b (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - マツタケさん» すみません、通知が無くて返信が遅くなりました。コメントありがとうございます!こだわっていた部分なので、お褒めの言葉とてもとても嬉しいです。次回は10ヶ月も練っていられませんからね笑 ご期待に添えるよう頑張りますので、引き続きよろしくお願いします! (2021年2月8日 11時) (レス) id: 022d617d7b (このIDを非表示/違反報告)
kiwii(プロフ) - お疲れ様でした。「揺らぎ」の宮近くんにもう会えなくなると思うと寂しい位心掴まれるお話でした。N11さんは"心苦しかった"とありましたが、本当に言ってそうなセリフにキャラクターへの愛をいつも感じていました。大好きな作品です!次回作を心待ちにしています! (2021年2月5日 9時) (レス) id: e9b2ea3480 (このIDを非表示/違反報告)
マツタケ(プロフ) - 完結おめでとうございます!約10ヶ月の構想と知り、驚きと尊敬を覚えました。しっかりとした構成、人物像、ムードが最高でした。次回作も待ってます! (2021年2月5日 1時) (レス) id: 2ce99fa258 (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - kiwiiさん» コメントありがとうございます。初めてコメントを頂きました…とても嬉しいです。温かいお言葉が何よりも励みになります!物語も終盤に差し掛かりましたが、どうぞ最後までお付き合いください。 (2021年1月31日 19時) (レス) id: 022d617d7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:N11 | 作成日時:2021年1月9日 1時