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いきなり「ギャー!!」と騒ぎだすミツキくんとサヤカちゃんの声に驚き、反射的に体が離れた。
大変だ、すっかり忘れていた。
続いて「ぜってー酔わせてやる!」と賑やかな声。
別の部屋にいるようで、ほっと胸をなでおろす。
脳が働き始めた頃、宮近くんは既に戻ってきた二人と言い合っていて、そこからは早かった。
ミツキくんがショットグラスを出してきて、並々に注ぐ。
そういうアホみたいな飲み方を好む彼を、宮近くんは呆れたように見る。
こういうテンションになる日は偶にあって、そんな時の宮近くんは、嫌がりながらもまあまあ強い、いや強いというより口が上手い。立ち回りが慣れている。
飲まされそうになったら、さらっとかわすのが上手いのだ。
こうなったら、行き着くのは終わりまでという感じで。
今回、予想外だったのはただ一つだけ。
気づいたら、さっきのソファで寝ていた。
宮近くんに抱きしめられる形で。
記憶は、無いが。服は、着ている。
すぐには理解できなくて、思わずため息をつく。
広めに作られたソファの上で、ぴったりと密着した二人。
きっと他の二人は、家主のベッドにいるだろう。
時計は、4時15分を示していた。
目を瞑ったら一層長い彼のまつげを眺める。
いつもは、記憶が無くなるほど飲まないように自制しているし、無理やり飲ませてくる人たちでもない。
なのに、昨日は…冷静な判断ができていなかった。
ハッキリと気持ちを確かめる前に乗ったのは、私。
触れたい人に触れている、それだけで良いはずなのに。
面倒だから気付きたくなかった、これ以上を望むことほど愚かなことはない。
考えれば考えるほど、思考が悪い方に向かっていくことは自明で。
腰に回された手の温かさだけが、心を穏やかにしてくれた。
少しだけ頭を寄せると、タバコの匂いがふわっと鼻をかすめる。
…吸っている姿なんて、今まで一度も見たことがなかった。
私の知らない彼。
たとえ何回会ったとしても、その全てを知ることは出来ない。
けれど、きっとそれ以上に、この人には何か隠されたものがもっとあるはずだ。
近づけば近づくほど、今まで微かに感じていたものが、その形を確かにしていく。
彼の深くて柔らかい所にまでも触れてみたいと思ってしまう。
これは間違った感情なのだろうか。
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N11(プロフ) - kiwiiさん» すみません、返信が遅くなりました。kiwiiさんと共に完結を迎えられて嬉しいです。一番大切なのはキャラクターへの愛かもしれませんね。この作品の宮近くんを愛してくれてありがとうございました。ご期待に添えるよう次回も頑張ります。引き続きよろしくお願いします! (2021年2月8日 11時) (レス) id: 022d617d7b (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - マツタケさん» すみません、通知が無くて返信が遅くなりました。コメントありがとうございます!こだわっていた部分なので、お褒めの言葉とてもとても嬉しいです。次回は10ヶ月も練っていられませんからね笑 ご期待に添えるよう頑張りますので、引き続きよろしくお願いします! (2021年2月8日 11時) (レス) id: 022d617d7b (このIDを非表示/違反報告)
kiwii(プロフ) - お疲れ様でした。「揺らぎ」の宮近くんにもう会えなくなると思うと寂しい位心掴まれるお話でした。N11さんは"心苦しかった"とありましたが、本当に言ってそうなセリフにキャラクターへの愛をいつも感じていました。大好きな作品です!次回作を心待ちにしています! (2021年2月5日 9時) (レス) id: e9b2ea3480 (このIDを非表示/違反報告)
マツタケ(プロフ) - 完結おめでとうございます!約10ヶ月の構想と知り、驚きと尊敬を覚えました。しっかりとした構成、人物像、ムードが最高でした。次回作も待ってます! (2021年2月5日 1時) (レス) id: 2ce99fa258 (このIDを非表示/違反報告)
N11(プロフ) - kiwiiさん» コメントありがとうございます。初めてコメントを頂きました…とても嬉しいです。温かいお言葉が何よりも励みになります!物語も終盤に差し掛かりましたが、どうぞ最後までお付き合いください。 (2021年1月31日 19時) (レス) id: 022d617d7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:N11 | 作成日時:2021年1月9日 1時