【ゆらくら派生作品】小鳥谷紅緒の妹録 (ページ5)

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友ページ5

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「辞書なんて、やっぱり興味が無ければタメにもならないわね。端から読む気ないんですもの」

何処かうんざりした様子で織慧が言う。

「まあ、頭に入れる気力がなきゃねえ」
「つまらないからやめにするわ。暇になってしまうけれど」

そう言いながら、織慧が私の脇を通り抜ける。部屋を出て行く妹の姿を見送ってから、一つ大きな欠伸をした。

時計を見やれば、昼過ぎを指していた。15時3分。そういえば、女友達に呼ばれていたんだった。行けたら行く、なんて信用感のない返事をしていたが、たった今私も暇になってしまったことだし、向かうとしようかな。

婆さん達に黙って出かけると後でヒスを起こすので嫌なのだが、正直に言うと友達付き合いにまで口を出されかねない。流石にそれは嫌だし、かといって納得してもらえる別な理由も思いつかない。

まあ、こっそり出てしまってもいいだろう。後が面倒臭いが、やる気なさげに謝って怒鳴られて、それでもへーへー言って誤魔化しておけばいつも通り怒鳴る気力を無くすことだろう。

私は鏡台の前に立ち、一応身だしなみを確認した。特に際立った特徴もない、平凡な薄めの顔。ただでさえ薄い唇はどちらかといえば下唇の方が薄くて、いつしか「紅緒は愛されないねえ〜」なんてうざったいノリで女友達が笑っていたことをふと思い出した。

鏡台に置いてあるヘアブラシを手に取り、無造作な黒髪を適当にとかす。私は都会への憧れにかぶれて、友達の家にあった雑誌に載っていた”ウルフカット”という髪型にしている。美容師でもこんな風に切るのは中々難しいみたいで、ましてやこの辺のド田舎の美容院じゃどこに行っても思うように切ってもらえなかった。友達に愚痴ったら、「あそこ、いいよ」とちょっと離れた美容院を教えてもらったので、仕方なく往復約3時間の道を歩いたものだ。
想像していた通り、帰ってきたら「なんですかその軽薄そうな髪型は、」なんて何だかぱっとしない悪口を婆さんに言われたなあ、なんて思いながら出かける用意を済ませて部屋を出る。着替えは今朝にとっくにしていたから、このまま外に出ても全然問題ない。

腕に下がってくるサスペンダーを肩に追いやり、バイト代でこっそり新調したスニーカーを履きながら、ふと靴箱に目をやった。織慧の靴は一足しかない。それも、学校へ行く時のシンプルなスニーカーだけだ。織慧らしくはあるが、他に欲しくなったりしないのだろうか。それ以前に、彼女の身につけるものは全てこの家の大人が決めている。それも仕方のないこと、で受け入れているのだろうが。