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Side海人
「あれ、病気のおぼっちゃんじゃねえ?」
俺を見下ろしてニヤついているこの2人には、なんとなく見覚えがある。派手な髪色を見ているうちに、こいつらが同じクラスにいる不良どもだってことをやっと思い出した。
「お前、また入院したんじゃなかったっけ?なに、サボり?」
海「…うるせえな、関係ねえだろ。」
そっちが本物のサボりだろ、と悪態をつこうとして、俺は慌てて口を閉じた。
鼻をつく、嫌な臭い。これが何の臭いか、俺でもすぐにわかった。
海「…っ、ケホケホっ、!」
「お前も吸ってみる?」
いつの間にか俺をはさむようにしゃがんでいた2人が、からかうように指の間に挟んだ煙草を近づけてきた。バカにしたように横目で見てくる感じが、吐き気がするほど気持ち悪い。
海「……ムカつく。」
「は?」
海「1本寄こせ。」
ほぼひったくるみたいに煙草を奪うと、両サイドの2人は急にうろたえだした。それが、余計に俺をいらだたせる。
どいつもこいつも、みんな同じだ。俺には、制限があって当たり前だと思ってる。弱い人間だって、決めつけてくる。バカにしやがって。ふざけんな。
俺は手の震えを必死に隠しながら、煙草を口元に持っていった。
でも、
「海人!」
よく聞き慣れた声がして、手の中の煙草はあっけなく叩き落された。痛む手を押さえながら、顔を上げる。
如「…俺の弟に、何してんだ。」
鋭くにらみつける兄ちゃんを見て、2人が面倒くさそうにため息をつく。そのままアスファルトの地面に煙草を放り投げて、あっさりどこかへ行ってしまった。
如「…吸ってないね?胸も苦しくない?」
正面にしゃがんで、兄ちゃんが聞いてくる。俺は、それには答えなかった。
海「……なんで、いるの。」
如「買い物に行って帰ってきたら、海人がいなくなってたって、父さんから連絡が来たの。俺のスマホなら、海人の位置わかるから…」
海「は?何だよ、それ…!」
勝手にGPSを入れられてたなんて、本当に聞いてない。反射的に「キモい」なんて言葉が飛び出す。
でも、兄ちゃんはそれを聞いても表情一つ変えなかった。
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あお - 「次の春へ」のちゃかまちゅ兄弟が気になります!日頃の2人の姿を読んでみたいです!よろしくお願いします! (2023年1月20日 12時) (レス) id: 4bc40c5a3e (このIDを非表示/違反報告)
みちゃ(プロフ) - こんばんは!私は、うみげんの「チョコよりあまい」「音のあふれる世界」の続きを1つのお話として読みたいです!ご検討いただけたら嬉しいです♪おさとさんの書かれるお話がどれも大好きなのでこれからも応援してます! (2023年1月16日 0時) (レス) id: 5dc2b1fc33 (このIDを非表示/違反報告)
tenpesuto(プロフ) - 私はのえんちゅの兄弟設定が好きなので、どのお話も好きなのですがよろしければ傷の続きや、過去のお話が読みたいです。 (2023年1月15日 21時) (レス) id: fc1fa02c30 (このIDを非表示/違反報告)
かおり - 書いていただけると嬉しいです! (2023年1月15日 20時) (レス) id: b38a957dc4 (このIDを非表示/違反報告)
かおり - こんばんは!とても良い案だと思います!どれもいいのしかなかったのですが、のえんちゅの話をもっと見たい、と言うのがやっぱりあるので、のえるくんの精神的な苦痛(確か9くらいのところの、元太くんとのお話だったと思います)の話で、助けてくれる相手を海人くんで (2023年1月15日 20時) (レス) @page50 id: b38a957dc4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年12月11日 20時