海の中にいる鏡面 (ページ22)

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２１話ページ22

この人になら言っても良いのかな。。

僕が迷っていると、
マーリンさんはゆっくり優しく僕に言った。。

壁画「ここには私と司ちゃんだけ。

私は司ちゃんを否定するつもりは無い。

そして、誰にも言うつもりも無い。

ここは貴方と私だけの空間。

誰も聞く事は出来ない。

だから安心して

ゆっくりで良いから…言ってみて」

僕はその言葉を聞いてマーリンさんを見る。

『本当に？マーリンさん…』

壁画「マーリンでいいわよ。ええ。

貴方の好きなタイミングで言いなさい。

今は時間がたっぷりあるわ。。

私にも貴方にも、、」

僕はカップに淹れた紅茶を眺める。

澄んだ赤色の紅茶に写る僕の姿。。
写っている僕は凄く弱々しく見えて…

リュウグウノツカイと思えないぐらい、、

僕はカップに入っていた紅茶を全部飲んだ。

そして、カップを置きマーリンの目を見た。

『僕が小さい頃。

人間で言う幼稚園に僕は通っていた。

幼稚園では人間の姿に馴れるように出来るだけ人間の姿で過ごすように教えられていたんだ。

僕はすぐに人間の姿になれて皆からの注目の的だった。
そのお陰か沢山友達が出来て毎日が楽しかった…

沢山、話をして。
沢山、遊んで。

凄く充実した毎日で楽しかった…。
でも、その楽しかった日々は保護者に見せる
発表会で壊れていったんだ」

壁画「発表会？」

『うん。皆で横に並んで魚の姿から人間の姿に変身するんだ。』

壁画「なるほど」

『その日は僕の両親は忙しくて兄さんも学校があって居なかった。

寂しかったけど友達が励ましてくれたお陰で
元気になった。。

そして、本番。
僕は魚の姿でステージに立った。。
でも、保護者席から聞こえたのは歓声ではなく
悲鳴だった。。

「あの、醜い魚は誰？！」

「竜宮の使いと言われても姿は醜いんだな」

「あれがリュウグウノツカイ？美しさの欠片も無い」

保護者達の鋭い目線は僕に刺さった。

それから僕の回りの友達は減っていった…。

保護者達が僕から子供を守る為に変な噂を流したんだ。

そのせいで僕は独りぼっち。。
その事を知らない兄さん達は一人になっている僕を不思議に思っていた。。

僕はこの姿のせいで皆離れていってしまったんだ。。

♀の魚であればいつでも美しく綺麗で居なくてはいけない。

でも、僕は美しくも綺麗でもない。
だから僕は♀ではなく♂として生きる事にしたんだ。。』

壁画「…」