こんな俺らでも。 (ページ18)

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こーじのおはなし。ページ18

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俺は幼稚園生の頃に高熱を出したせいで

耳が聞こえにくくなった。

だんだん聞こえなくなって、

40歳くらいにはほとんど聞こえなくなるって

医者には言われたらしい。

中学に入学する前には両耳に補聴器を付けないと

周りの声は聞こえにくくなって

手放せなくなった。

微かには補聴器なしでも聞こえるけど。

読唇術を早いうちから学んで、

口の動きで会話の内容を把握することはできるようにした。

高校3年の秋。

最後の文化祭をやり遂げた直後だった。

朝起きるとやけに静かだった。

嫌な予感がした。

キッチンで朝ご飯の用意をするオカンの、

オカンからの「おはよう」が聞こえない…

「オカン、、俺、なんも聞こえへん…」

自分がそう言った声も俺の耳には届かなかった。

信じたくなかった。

まだ18。

40歳くらいでなるんじゃないん？

オカンは泣き崩れた俺をそっと抱きしめてくれた。

首元に冷たい水滴が零れてきた。

オカンも泣いてるんや。

すぐに病院に連れてってもらって

検査をした。

案の定、失聴だって。

右耳は完全にアウト。

補聴器をしても何も音を拾えない。

ただ、左耳は補聴器をすれば極わずかではあるけど
音を拾えるかもしれない。

だから新しい補聴器を作り直した。

もちろん左耳だけ。

やって、右耳はしてもしなくても変わらんねんで？

そんなん作ったって無駄やん。

こうして俺は音のない静寂の世界に迷い込んでしまったんだ。

阿部くんと出会ったのは２回目の診察の時。

補聴器が合っているかどうかを確認するらしい。

あん時、ほんま助かってん。

オカンが仕事抜けられへんって言うから

1人で行かなあかんってなってん。

呼び出しはほんまに聞こえんくて、、

阿部くんおらんかったら一生呼ばれてることに気づけへんかったやろな。

それに話聞いてくれて落ち着けた。

耳が聞こえなくなったショックでご飯が喉を通らなかったり、学校に行けなかったり。

辛かった。

でも他人に話すといいって聞いたことあるやろ？

そんな感じやった。

阿部くんは聴覚過敏だから絶対キツかったはず。

それなのにうんうんって聞いてくれて。

感謝しかない。

そんな阿部くんと同じグループでやっていく。

楽しみやな。