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母ちゃんはゆっくりとオレを見上げて、
目尻から涙を流しながら
温かくて優しい表情を見せる。
「…和也。貴方には…本当に感謝しているの。
だから、もう…自分の事だけ考えて欲しい。
和也には和也の人生がある。
自分の信念を貫いて、真っ直ぐに生きて。」
母ちゃんが沢山の気持ちを込めて
伝えてくれたその言葉は、
オレへの大切な遺言になった。
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オレはAを追いかけて大阪へ来たが、
今思うと、この選択が
オレ達の運命の歯車を狂わせる事になった
最大の原因なのかもしれない。
もし、あのままオレだけが東京に残っていたら
彼女を悲しませる事も無く、
お互い何も知らないまま
幸せに過ごせていたのかな…
自分の信念を貫いた選択とは違う
もうひとつの道の存在を考えると今も
後悔にも似た複雑な感情で胸を締め付けられる。
母ちゃんの莫大な治療費と
Aと少しでも同じ世界に居たかった理由で
オレはホストを始めた。
あまり酒は好きじゃなかったけど、
性格に合っていたのか、それとも運が良かったのか
入店当初から簡単に客が付き、
自分で言うのも何だが
売れっ子ホストに成り上がっていく。
でもそれとは反比例する様に
Aは寂しそうな顔を見せ始めた。
…自分だけ置いてけぼり、と言わんばかりに。
もちろんその事に気付いてはいたけど、
初めての夜の世界の刺激に
少しずつオレの心は麻痺していき、
彼女の気持ちが見えなくなっていた。
そして、去年の年末辺りから明らかに
Aの様子が変わったんだよ。
何か切なそうに物思いに更けたり、
LINEの返信がほんの少し冷たくなって
顔付きも普段より柔らかくなったのを見て
オレは覚悟した。
本心は受け入れたくないけれど
とうとうこの日が来たんだ、と。
…Aは「本当の恋」をしている。
今までも恋愛をする彼女を見てきたが、
他の誰かをこんなにも大事に
愛おしそうに想う瞳に気付かない訳が無い。
もう高校生の時とは違い、
それなりに大人に成長したオレは
昔の真っ黒な心にとぐろを巻いて居座り続けた
あの醜い感情は少しずつ姿を消しつつあった。
別に恋愛するのは自由。
でもいつかは、自分達の過去と向かい合わなければ
いけない時が来る。
もし、Aが全てを知った時は
彼女が目の前から消える前に
彼女が傷付く前に
…Aの元から去ろう。
何よりも大事な彼女と決別する。
そう、決めていた。
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ゆき(プロフ) - コメ返ありがとうございます。本当に大好きな作品です。実は私のお誕生日に櫻井さんのお誕生日のお話だったので、とっても感激してたんです。またシリアスな展開になって大変かと思いますが、更新を楽しみにしてますね。主人公ちゃんがんばってほしいです。 (2019年3月14日 11時) (
レス) id: d68d4105ec (このIDを非表示/違反報告)
サフィア(プロフ) - ついこの間この小説の存在をしって一気に読みきっちゃいましたっ。すごく大好きになりましたし、文章とっても大好きです。更新楽しみにしてます！ (2019年3月6日 14時) (レス) id: 34b00c4705 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - さっくさん、更新をいつも楽しみに読ませて頂いています。というか好きすぎて何度も読み返してます。櫻井さんと主人公の関係にキュンキュンドキドキしながら、時に切なくて涙無しには読めません。これからも更新を楽しみにしてますね。 (2019年3月4日 14時) (レス) id: d68d4105ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さっく | 作成日時：2019年2月25日 18時
