一生に一度の恋５ (ページ42)

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ずっと黙って俺に付いてきとった
彼女の茶色い瞳が
悲しそうな怒りを込めて俺に訴えてくる。

…A、落ち着け。
お前の気持ちも分かっとるから。と
黙って彼女の言い分を聞いてから、
カズの心の中を代弁する様にお願いをした。

２人を側で見てきて思っとった事がある。

こいつらには兄妹以上の
何か見えへん繋がりがあって
どんな大変な事も共に一緒に歩んできた様に
俺には見えとった。

やからこそしょーもない揉め事で
２人の気持ちがこんなに行き違う事が
不思議やったのと
もどかしい気持ちでいっぱいやった。

しかし、俺の考えを他所に
Aの男前な頼もしい顔に
俺は少しビックリしつつ、ホッとした。

….Aなら、カズを救ってやれる。
いや、多分Aにしか出来ひん。

どんな道を歩んで来たんかは分かれへんけど、
俺には何とも言われへん確信があった。

お前らが楽しそうにしとる笑顔見とったら
こっちも幸せな気持ちになんねん。
夜の汚れた世界の中にも
こんな楽しくて癒される空間があったんやなって。

お前らは…２人でひとつやねんで？

Aを見送った後、
真っ直ぐバックヤードに戻ると、
カズは俺に背を向けた形で
ロッカーにもたれながら座っとった。

「Aの事、ちゃんと帰したで。」

「…何か、言ってた？」

「お前の言葉に納得してへんみたいやな。
諦めへん、カズには私しか居らんからって。」

そう伝えると
カズはフンッと鼻で笑った。
…やけど、声は苦しそうやった。

「Aは馬鹿だよなぁ。そういう所が。
オレはもう、何も出来ないのにさ…

もうそろそろ…
一緒に居ない方が良いんだって。」

「お前、どうしてん…？お前らし無いで？
あいつが今、どんな気持ちで居るか
分かってんねやろ？
それやっ

ーバンッ！！！！

突然、カズがロッカーを殴った。

「全部分かってるからこそ、離れんだよ！
Aが全てを知ったら、オレらはもう
前の様には戻れねーんだから！

Aが目の前から消えるくらいなら、
先にオレが…消えた方がいいんだよ…」

いつも冷静やったカズの大声に驚き、
その場から動けへんくなった。

そして俺に振り向き、目は冷たいまま
言うたその言葉はあまりにも衝撃的で
目の前の男からは想像も出来ひんかった。

「ねえ、裕さん。」

「……………。」

「オレ、人殺した事あるって言ったら…

どうする？」

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