一生に一度の恋５ (ページ5)

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密閉容器に蓋をして
また紙袋に戻している櫻井さんに聞いてみた。

『櫻井さんって、嫌いな食べ物って無いの？』

「パクチー。」

『分かる！私も苦手(笑)…他には？』

「あとは何だろ…。奈良漬けとか？(笑)
でも、基本的に苦手だなって思っても
頑張って食っちゃうタイプ(笑)」

『そうなんだ(笑)

お誕生日さ、何食べたいかなー？って
考えてたんだけど
もし苦手な物あったら駄目だし、
ちゃんと聞いておこうと思って。
…どんなお店が良いとかある？』

「…………の…ょり…。」

櫻井さんの希望を聞いてみたが、
店が騒がしくてよく聞こえなかった。
ごめん、周り煩くて(笑)と、
もう一度言う様にお願いすると
彼は真っ直ぐ真剣な目で見つめてきた。

「Aの手料理が食いたい。」

…私の？お店じゃなくて良いの？

………いや、ちょっと待って。

私の手料理って事は……？
えっ？どういう意味！？

混乱する頭をどうにか冷静にしようとするが
全く整理が付かない。

『それって……私の家でって事だよね？』

櫻井さんはしばらく黙ったままだったが、
何かを諦めた様に少し笑った。

「……いや、いいよ(笑)迷惑だろ？
さっきの煮物、あんまり美味かったからさ。
誕生日だからって、
ちょっと我が儘言ってみた。(笑)」

そう言って焼酎の入ったロックグラスを持って
一口、喉に流し込んだ。

頭に前に言われたオーナーの言葉が蘇る。

《…あとは自分でチャンスを捕まん限りは
幸せになられへんで。》

…そうだよ。
そうやって心の裏を探る事も
何でも疑ってかかるのは止めよう。

櫻井さんは真っ直ぐ素直に伝えてくれている。
私もちゃんと素直に答えなきゃ。

手料理で良いなら、
櫻井さんの喜ぶ顔が見れるなら、
こんな、私で良いなら…。

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