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重ねられたグラスの段数と
注ぐ酒の値段によって金額は変わるけど、
最低ラインでも余裕で１５０万は越える。
タワーの横に陳列されとる高価なシャンパンと
仕上げに注ぐ透き通った茶色い飾りボトル、
トータルを見積もっても
タワー一基で大体３００万辺り。
それを三日間連続でやると聞いた時、
俺は開いた口が塞がらんかった。
今回用意されるタワーと
他の客の売り上げも込みで考えたら
この三日間でカズは
１０００万プレイヤーにのし上がる。
うちの店は有名店でもあらへんし、
こじんまりとしたホストクラブなだけに
こんな優秀に金を稼ぐ力を持った人材が
現れた事だけでも奇跡やと思う。
やけど、俺よりやや小っさいその肩に
代表や従業員、周りの客、
ましてや店の将来までプレッシャーとして
のしかかっとると思たら、
何だか同情せずには居られへん。
本人は口では偉そうな事言いよるけど、
心の中は不安でいっぱいやろな…
さっきAにLINEをした事をカズに伝える。
「…Aが無理せず頑張って、って
言うとったで。」
その言葉にカズは目の色を変えて俺を見た。
やけど、すぐに目線を戻して
寂しそうな表情を浮かべよった。
「オレがどれだけ必死に頑張ろうが、
Aは喜ばないし、悲しい顔するだけだよ。」
「何を言うてねん。
あんなにお前の事、大事に考えとんのに…」
「てか裕さんさ、
Aと連絡取るとか爆弾※だよ？(笑)
バレたら大変な事なるの分かってますよね？」
「そんなん言うんやったら、はよ大事な妹に
連絡ぐらい返したれ。アホ。」
カズと連絡が取れへんと店を訪ねてきた
Aを思い出す。
普段の姿からは想像も出来ひんくらい焦っとって
必死過ぎるくらいカズを
心底心配しとる様子やった。
そんな姿を見とったら
Aはカズの妹なんやったら客ちゃうし
爆弾もクソもあるか！と連絡先を交換したった。
店の幹部の人間としては有り得へんやろうけど、
こいつらに俺が出来る事言うたら
何したったらええんやろ…と
アホな俺なりに考えた結果やった。
自分の身の危険すら犯してまでも
俺は２人の笑顔を守りたかったんや。
※爆弾＝ホスト界で最もしてはいけない行為。
指名しているホストが居るのにも関わらずヘルプと連絡を取ったり、遊ぶ事。
爆弾をするとホスト側に罰金が科せられる。
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作者名：さっく | 作成日時：2019年2月9日 17時
