一生に一度の恋５ (ページ36)

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….全然、何も知らなかった。

知らないばかりか
必死にお母さんの治療費を稼ぐ為に
ホストの仕事を頑張るカズに対して
自分の価値観を押し付け、
「No. 1ホスト」という色眼鏡で見ては
勝手に１人で寂しがり、
取り残された気分になっていた。

ホストをすると宣言された日。

Aの為でもあるけど、母ちゃんの為にも。
と、真剣な顔で言っていた事を思い出す。

カズは…昔も今も
何も変わってなんかいなかった。

彼の背景を理解もせず
変わったと決め付けていた私は、最低だ。

『…カズ、ごめん。
何も気付いてあげられてなかった…

でも、一言くらい教え
「Aに言った所で何か変わんのかよ！？

母ちゃんが死んだ事も、

…お前が悲しい顔するのもさぁ！」

私の言葉を遮り、
興奮して叫んだカズの目は血走っていて
私への怒りで赤く充血していた。

しかし、カズが重要であればある程
何も話してくれない事に苛立ちを覚える。

…そんなに私って頼りない？

『…私達、家族なんだよ！？
ずっと励まし合ってきたじゃん！
どんな辛い時も一緒に居たじゃん！

そうやって１人で抱え込まないでよ…。』

「オレのせいで、Aを悲しませる事
したくないんだって。

だから…卑怯かもしんないけど、
無視してたんだよ。」

カズが売れていく度に寂しくなっていく気持ち。

ずっと一緒に居たからこそ、
自分が悲しむと私も一緒に悲しむ事。

私以上にAという人間を理解しているから
敢えて言わなかったんだろう。

カズはどんな時でも優しい。

それにただただ甘え切っていた事を痛感した。

連絡が取れなかった理由が分かり
自分の愚かさを悔やんでいると、
カズがいつもの声に戻る。

「もう頑張る目標は無くなったけど
周年祭も上手くいったし、
オレ、本腰入れて仕事する事にしたから。

Aも好きな人出来たんでしょ？
オレの代わりも現れた事だし…
もうAが店に来るのも、
オレが家に行くのも止めよっか。

てか、兄妹なのに
距離感がおかしいんだよ。オレ達(笑)」

笑いながら捲し立てた後
立ち上がり、何処かへ行こうとする。

『っ、待って！カズ！』

このまま本当に何処かへ消えてしまう気がした。

カズが居ない世界なんて…そんなの絶対に嫌だ。

離れていかないで。
何処にも行かないでよ。

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