一生に一度の恋５ (ページ34)

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「Aちゃん！久しぶりやんかっ！」

他のお客さんに挨拶する為、
カズが席を外すと同時に現れたのは
ほぼ同期のミナト君。

女の子の様な可愛らしいルックスで
物怖じしない性格だが
ちょっとだけ空気の読めない所があり、
私は少し苦手意識があった。

『そうだね(笑)…ミナト君、元気だった？』

「元気も何も、同期のカズに
ナンバーは置いてかれるし
毎日上手い事いかんで凹んでんねん…。

Aちゃん、癒してやー！！」

『…あはは。』

人の事ばかり気にして勝手に凹んでいる姿に
…じゃあ、カズみたいにもっと努力すれば？と
心の中で毒付き、愛想笑いしか出ない。

「せやけど、しばらく見ーひんうちに
もっと可愛なった？

…どーせ、カズにたっぷり
愛されてんねやろ？(笑)」

『…いや、どうだろ？(笑)
そんな事は無いと思うけど…』

返答に困り、曖昧な事しか言えずにいると
下の子が忘れたのであろう灰皿を片手に
カズが席に戻ってきた。

「オレら、そんな関係じゃないよ。
だって…Aには好きな人居るもんね？」

いつの間に話、聞いてたの！？

何の違和感も無く、普通に会話に参加するカズ。

「そうなん？(笑)
でも、確かに女性らしくなったっちゅーか
雰囲気柔らかくなったやんな！」

頭の中には櫻井さんが思い浮かんでいたが、
カズからその話題に触れる事に
意味が分からず混乱した。

「…居るよね、好きな人。」

隣の彼の顔には笑顔も無く、
自分に対して敵対視すら感じられる様な鋭い目で
私を見ていた。

「なぁなぁ、どんな人なん？
何歳？何処のホスト？」

…この事は今、言うべき話じゃない。
先に仲直りしてから
また改めて櫻井さんとの事、伝えたいのに…

助けを求める様にカズに目線を送る。

しかしカズの反応は想定外だった。

「ほら、聞かれてるよ。ちゃんと答えたら？」

…それはカズの本心？
あれだけ昔の恋愛の邪魔をしてきた
カズの事だから知りたいの？

でも、今はそういう状況じゃないし、
何より先に仲直りしたいのに…

彼の冷たい態度に尻込みしそうになるが、
ミナト君の悪気の無い無邪気な興味を
無視するのも可哀想で
言葉少なめに淡々と答えた。

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