一生に一度の恋５ (ページ22)

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常連客ページ22

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金曜日の夕方。

出勤の準備をしていると、
久しぶりの安田さんから来店のLINEが入り
その事を店に伝え、また準備を進める。

この頃メイクのノリがすこぶる悪い。

毎日寝る前にカズを思い出しては泣き、
まともに睡眠が取れず、寝不足が続いていた。

カズからは相変わらず連絡が無い。
毎日LINEも電話もしているが
変わった事は何一つ無かった。

もう二度と会えないんじゃないか？
命の片割れが居なくなった空虚感で
生きてる感覚も分からなくなるぐらい
私の心はボロボロだった。

櫻井さんとは毎日連絡は取り合っているが
センター試験まで２週間を切り、
週末ともなれば私が仕事の為、
会える時間が無い。
平日の休みに会おうと思っても
ただでさえ、学生にとっては
人生に一度の勝負の時期。

三年生の担任をしている櫻井さんを
私の我が儘に付き合わせる事が申し訳無かった。
次の約束といっても
櫻井さんのお誕生日とだいぶ先の事で
それが余計に私の精神状態を
悪化させているのも事実。

…櫻井さんに会いたい。
会って、私の苦しい気持ちを受け止めて欲しい。
また優しく抱き締めて欲しい。

しかしそんな想いすら彼に伝える気力も
もう無くなりかけていた。

だが、仕事というものは別物で
私のプライベートとは反比例する様に
お客さんからの指名や予約で埋まり、
とても忙しかった。

…いや、忙しい方が何も余計な事を考えずに済み、
無我夢中で仕事に没頭出来ていた。

そう自分では思っていた。

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安田さんの予約の為に、早めに出勤して
準備を完璧にする。
待機場所で煙草を燻らせながら、目を閉じた。

今から「明奈」だ。
余計な事は考えない。

自分自身を無にして見えない鎧で包む。

深呼吸を一つして、頭をすっきりと切り替え
私は事務所に向かった。

一か月ぶりの安田さんは
いつも増して奇抜な格好で
髪の毛が青くなっている事に驚いた。
…先月はシルバーアッシュだったのに。

彼の変化の振り幅に思わず笑みが溢れる。

安「何で笑ってるん？」

『えー？(笑)久々、安田さんに
会えたのが嬉しくて。』

「ホンマ～？嬉しい事、言うてくれるわぁ。
相変わらず、
明奈ちゃんは口が上手いんやから(笑)」

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