一生に一度の恋５ (ページ20)

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部屋番の書いてあるポストイットを受け取り、
事務所に背を向けて
仕切りのカーテンを潜ろうとした時、
オーナーに呼び止められた。

『明奈。
客が再起不能なるくらいヒーヒー言わして、
悦ばしてこいや。』

いつの間か、こっちに身体を向けて
ふんぞり返った体制の男前が
私の目をしっかり捕らえてニヤッと笑う。

その姿が、少しだけ格好良く見えた。

私は無言で「明奈」の顔を作り、
妖艶な笑みだけ残して
お客さんの元へ向かった。

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それからというもの、
一向にカズからの連絡は無かった。
LINEをしても電話を掛けても
一切、音沙汰が無い。

痺れを切らした私は
毎週月曜日はカズの店が休みの為、
次の日の火曜の仕事終わりに
eightに行く事にした。

もしかしたら…と最悪な状況まで
想像してしまい
黙っていられなかった私は、
丸ちゃんからお給料を受け取った後
今日、送り要らないから！
お疲れ様でしたっ！と言い捨て、
足早に店を出た。

早歩きでミナミの繁華街へ向かう。

…まだ怒ってても良い。
嫌な顔されても良い。
ちゃんとカズの姿を確認しない事には、
心のモヤモヤした不安が増していく一方だった。

雑居ビルのエレベーターに乗り込み、
賑やかな音楽と騒がしい声が漏れている
少し重ためのドアを開けた。

すると目の前のバーカウンターに
ちょうど裕くんが立っていて
新人らしき子に何か話している様だった。

「…あれ？Aやん。どないしたん？」

私に目線を向けて
不思議そうな顔をして近づく。

『………カズ、居る？』

「えっ？…カズ？
A聞いてへんの？

あいつ先週から休んでんねんで？」

『…はっ？』

予想外の言葉に頭が付いてこない。
…仕事にも来てないの？

『ちょっと待って！先週っていつ！？』

私の焦った余裕の無い姿に
裕くんは何かを汲み取ったのか、
…ちょっと外で話そか。と
促されるまま２人で店から出た。

人目に付かない階段の踊り場の様な所で
向かい合って話す。

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