一生に一度の恋５ (ページ2)

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眼鏡を掛けた４０代くらいの女性所員は
私が記入した紙に目を通し、

「…えーと、戸籍謄本１枚ですね。

ご用意出来ましたら、
またお名前お呼び致しますので
お掛けになってお待ち下さい。」と、
ほんの少しだけ笑みを浮かべて私を促した。

先程と同じ場所に戻り、深呼吸をする。
さっきからずっと心臓の拍動が
緩む事を知らず、大きく動き続けている。

…やっぱり少し緊張する。
どんな風に、載ってるんだろう。

少しでも私とカズの過去に
繋がるヒントがあればいいけど…

悶々と考えている時、
私を呼ぶ声が聞こえた。

「…櫻庭さーん、お待たせしましたー。」

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土曜日の夕方、
櫻井さんとミナミの繁華街の外れにある
大きい薬局の前で待ち合わせする事になり、
家から歩いて向かった。

今日はグレーのロングダッフルコートに
指先まで隠れる白のタートルネックニット
緩めの茶色のワイドパンツ
グレーのスニーカーを合わせて
髪型も下の方でナチュラルに結んだ
ポニーテールの
ゆったりとしたリラックスコーデ。

なんだか気持ちも柔らかくなる。

…時間も余裕あるし、
待ち合わせ場所までのんびり行こう。

家から持ってきた紙袋を反対の手に持ち変え、
信号待ちをしていると
前からチャラチャラとした
如何にもな男性が声を掛けてきた。

「…お姉さーん。今、時間とかある？(笑)」

…ただのキャッチだな。と彼の素性を見破り、
表情を変えず無視をした。

「エエ仕事紹介したいんやけど、
興味とかあらへん？
お姉さんやったら、絶対稼げんで！」

…えぇ。あんたが紹介したがってる様な
仕事してますし、既に稼いでますけど？
と、心の中で毒付きながら
『…すいません。急いでるんで。(笑)』と
愛想笑いで横断歩道を渡ろうとしたが、
ガシッと右腕を掴まれ、動きを止められる。

「…ちょっと待ってーや。
話だけでも、聞いてくれてもエエやん。
逃げるとかズルいんやけど。」

…はぁ！？

今時こんな無理矢理なキャッチ、あり得る？
このまま警察連れていってやろうか。

私を離さない野郎を思いっきり睨みつけ、
大声を出そうと大きく息を吸った、その時

「…てめー、何してんだよ。
俺の連れに手出してんじゃねーぞ。」

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