一生に一度の恋 (ページ26)

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『……私も、一本貰ってもいいですか？』

「えっ！？意外っ(笑) 全然良いけど。
…思ってたより、悪い女そうだな。(笑)」

そう言いつつ、箱から一本取り出して
私の手に渡してくれた。
すかさずホテルの名前の入ったライターで
火を付けてくれようとしたので、
その手を押し退けた。

『っ、…ダメです！！自分で付けます！
こういう業界、
お客さんに煙草の火付けてもらうのは
運気が下がるらしいです。』

入ったばっかりの時オーナーに
そう教えられた。

初めてのお客さんの前では煙草は吸わないけど
ずっと守っている自分のルール。

櫻井さんはへぇ～。知らなかった！
と言いながら納得した様で
ライターごと手渡してくれた。

慣れた手付きで煙草を咥え、火を付ける。

いつもの様に吸い込むと
口いっぱいにニコチンの苦い味がジワっと広がり、
目を伏せて煙をゆっくり吐き出す。

…あぁ、落ち着く。

「実は、結構なヘビースモーカーだろ？
吸い慣れてる感、すげぇ(笑)

…….何か、さっきと別人に見える。」

さっきまで優しく微笑んでいた
櫻井さんの目がジッと私を捉え、
獣みたいな何かを奪い取る様な
気迫のある目力に動けなくなる。

「….煙草吸う女はあまり好きじゃなかったけど、
こんなに色気出るもんなんだな。」

そう低い声で呟いた。

その声が脳内に響き、
下半身の奥が疼く。

声だけで身体が反応するなんて
この業界に身体を沈めて数年、

初めてだった。

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