物理的八方塞がり ページ10
噂のあの子ことAちゃんをお礼と称してカフェに呼んだ。
実際に来てくれるとは思わなかった。
サボテンみたいにツンツンとした態度には寂しさや申し訳なさなんかが含まれていた。
どうしても話してみたかった。
そんなにも他人のことを考えて苦しんで、苦しみながらも結果を残しているAちゃんはすごいと思う。シンプルに。
だから公園に彼女を連れて行って思っていることを話した。
そうしたら気絶した。
えっ俺が悪い？
どうしたら良いのかわからないから兎に角事務所に連れていこう。
◇◇◇◇
嗅ぎ慣れない匂いがする。
目を開ければ家のものよりも明るいライトと画面の先にいる人がいた。
「っえ？」
ゆっくりと体を起こせば私はソファーに寝ていたようだ。
うちの布団よりも柔らかくて気がつかなかった。
「調子どう？ホークスのせいで倒れたんやろ？」
災難やったね、と控えめに笑いあうヒーローがそこにいた。
「いや、俺なんもしてませんて」
紙コップを二つ持ったホークスが奥から出てきて、口をつけてない方のコップをくれた。
「お茶、コーヒー、紅茶どれがよか？」
指を折りながら背を向け、冷蔵庫を漁っている。
「っあ、コーヒーで」
コップを口に咥えたままポットからコーヒーをコップに注ぐ。
どうやらアイスだったようだ。
小さくお礼を言えばヒーローたちが笑い出した。
「借りてきた猫みたいやん」
「ホークスが言っとった通りクマが酷いね。ちゃんと寝とる？」
「なんて返したらいんだろう」
なんて、悩まなくても出てくる言葉。
「私クマができやすい体質なんですよ。大丈夫ですから」
すらすらと出てきてくれる嘘に感謝していると、ヒーロたちは顔を顰めていた。
「Aちゃん？やっけ？」
「はい」
先程の和気あいあいとした雰囲気はどこかは行き、画面の先の顔になった。
「俺たちもヒーローやけん危ないところに立ってる人は一目でわかる。いっつもそう言って自分を騙し続けとると？」
ヒーローというのはお節介が多いのだろうか。
ホークスの方に視線を向ければ、やれやれとわかりやすいポーズをとって微笑んでいた。
「いや、ほんとに大丈夫です」
鞄を掴んで逃げようとしても扉の前にはホークスがいて、目の前には他のヒーローがいる。
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作者名：yugi 0434 | 作成日時：2022年5月7日 23時
