基本強気なのに変なとこ弱々しいんだね ページ8
届け物が済んだことだし仕事に戻ろうと空を飛んでいると彼女と連絡先を交換することを忘れていた。
「やっちゃった〜」
気づいたとしてももう遅い。
彼女はもうバイトに行っているだろう。
俺がなんでそれを知っているのかって？
生徒手帳の中身を確認する際にスケジュール欄にびっしりとバイトと書かれていたからだ。
そこら辺のフリーターと同じくらい稼いでいるんじゃないだろうか。
ヒーローもびっくりするほどのワーカーホリック気味だ。
メンタルケアというものに興味はないが、彼女は面白いと思う。
息抜きがてら観察してみよう。
「さて、バイト終わりまで働くか」
この後空いた時間で強盗の容疑者を捕まえたらでかでかとネットニュースに載った。
彼女も見ているのだろうか。
暗い中のあの色素の薄い茶色い頭を探すのは存外簡単だった。
後ろから声を掛けたら黄色い悲鳴ではなく、防犯ブザーの音を浴びせさせられそうになった。
イカしてると思う。
まぁ、No.2ヒーローという肩書きもあるから警察は俺の味方だろう。
それどころか、高校生がこんな時間に出歩いているという方がよっぽど問題だ。
頭のよい彼女が防犯ブザーを鳴らさないことはわかりきっていた。
◇ ◇ ◇ ◇
連絡先を交換しようといわれた。
仮にも人気絶頂中のヒーローが女と連絡先、アイコンからして個人用のものを渡しても良いのか？
なんというかプロ意識の足りない人だと思った。
「今度お礼してっていったじゃん。いつ頃あいてる？」
てかスマホ持ってたんだ、よかった。と言われた。
裕福でなくてもスマホくらい持っている。
「ハァ、貴方のような地位の人と私が話してるなんてバレた暁には私は貴方のファンに刺されて殺されるんでしょうね」
それもまた良いかもしれない。
スケジュールを確認すると幸運にも空いている日がなかった。
「残念ですがお礼はできそうにありません。お金渡すんで好きなもの買ってください」
財布の口を開こうとすると大きな手に止められた。
「困ったことにですね、市民からお金はもらえないんだな」
差し入れとかなら別なんだけどね、と付け足された。
勝手にスマホを覗き込んできたかと思えば次の決行日として予定を入れていた日を指定された。
ヒーローの感というやつなのか、その日以外は本当に空いていない。
受け入れるしかない。
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作者名：yugi 0434 | 作成日時：2022年5月7日 23時
