剛翼を持つ男は強欲なのか！？ ページ6
生物・化学部に所属している。
今日も顧問の先生にこき使われている。
「いやぁ、こき使ってるみたいでごめんね」
「そんなことないありませんよ」
疲れてしまうが、教師受けのいい笑みを貼りつける。
申し訳なさそうに謝ってはいたが、すぐに他の先生と無駄話をしているところを見ると本当に思ってはいないのだろう。
「世の中そんなもんだ」
誰かが共感を示してくれるわけでもないのに言わずにはいられなかった。
持論だが、自分という人間を肯定できるのは自分だけだと思う。
渡り廊下の戸を開けると、赤が飛び込んできた。
鮮明な赤。
その姿に見覚えがあった。
「ホークス…」
「やっほー」
手を振りながらこちらに近寄ってくる。
ヒーローが不法侵入してもいいのか。
「今は学校開放週間じゃないですよ」
怖気付いたのか一歩下がってしまった足を前に出し、睨みつける。
彼は、何か言おうとして、ため息を吐いてから見慣れた物を見せてきた。
木箱を一旦置いて制服のポケットに手を突っ込めばあるべきはずのものがなかった。
「あの時に落としたんだ」
ホークスの手から生徒手帳を取ろうとすればヒョイと腕を上げられた。
「渡したいんだけど今個人情報には厳しくてさ、身元確認しないとなんだよね」
清々しいほどのヴィラン顔に一周回って口元が上がる。
「わかりました」
一度視線を地面に下ろしてから彼の目を見て堂々という。
ただそれだけだ。
「梨野A。１６歳、９月１日生まれ。
「うん、バッチリ」
指で丸を作って笑っている姿はまだ少年のようだった。
生徒手帳を返してもらおうと手を伸ばし、掴めば彼の手から抜けない。
「俺ってすーごく多忙なわけ」
「だから？」
両手で掴んでもびくともしない。
「お礼もなしにねぇ？」
彼の言いたいことはよくわかった。
「いや、警察に届けるならすれば良かったでしょう。わざわざもってこいなんて言ってない」
「第一お礼なら国からたんまりお給料として貰っているでしょう？
それ以外にも貴方CM契約してるのにこれ以上何を欲しがるんですか！？」
「いや、それとこれは別」
澄ました顔でがめついことを言っている。
なんて大人気ないヒーローなんだ…！
カテンフェのような茶目っ気→←君が落としたのは純真さ？それとも生徒手帳
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作者名：yugi 0434 | 作成日時：2022年5月7日 23時
