君が落としたのは純真さ？それとも生徒手帳 ページ5
Ｎｏ．２ヒーロー。
それが俺の社会的仮面だ。
人々は何年間も自分たちを守り続けてきた男よりも、ひょっとでの若造を支持する。
当たり前に平和を享受しておいて、少しでも気に入らなければ叩く。
この社会に不平不満がないかと問われれば、彼女のように答えるだろう。
彼女のことは新聞なりで見たことがあった。
一度だけ、彼女が書いた文章を読んだことがあるが、なんだかイメージと違っていた。
文章の中の彼女はとても力強い人で、でも繊細さが言葉選びに出ていた。
「そういえば今日飛び降りようとしてた女子高生に会ったんですよね」
事務所でコーヒーを淹れてくれているSKに何の気なしにいえばすごく食いついてきた。
「いや、目つき悪いけど可愛らしい子でしたよ。あとクマ凄かった！」
こんなですよ、と言いながら目の下を触ってみせればSKは深刻そうな顔をしていた。
「最近若者の自 殺が増えとうけね。
そろそろ五月やし、忙しくなるやろ。その子も専門医に見せた方がいいんやないと？」
真面目な返答に返す言葉がない。
俺にはあの子が死ぬようには思えなかった。
目は死んでいたが、言葉に魂が篭っていた。
なりよりも、俺は死なないでいい命を死なす気はない。
「まぁ、彼女に接近してみますよ。これもあるし」
手の中にある彼女のものであろう生徒手帳をひらひらと見せつけるとSKは顔を顰めた。
「ホークス。流石にそれはいけんよ」
「いやっ！違いますから！！落としたの拾っただけですって」
冷たい眼差しに背筋が伸びた。
ごめんごめんと謝ってくれたが、あの目にはまだ疑いが残っていた。
明日にでも届けに行こう。
ホントは早めに渡すつもりだったが、彼女のことが気になってしまい、放課後になってしまった。
学校での彼女は本当に普通の子で、昨日死のうとしていたような危うさなどは持っていなかった。
彼女が一人になったときに地面におり、近寄れば明らかに動揺していた。
澄ました顔しか見たことがなかったから少し気分が良かった。
白衣を着た彼女はビーカーや三角フラスコが入った木箱を持っている。
「やあやあ、昨日ぶりだね」
「なんですか。ストーカーですか？ヒーロー」
流石の彼女も俺がヒーローであるということは知っていたようだった。
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作者名：yugi 0434 | 作成日時：2022年5月7日 23時
