手が冷えすぎると暖かく感じる ページ11
「ちゃんと食べな！！」
目元に涙を浮かべたヒーローが拳を握り、震えながら言った。
なぜそんなにも他人に一生懸命になれるのだろうか。
わたしにはわからない。
「いや、食べてますって少食なんですよ」
私の前にパンやお菓子が積み上がっていく。
懸命に手を振っていらないとアピールしてもヒーローはさらに涙を零していくばかり。
「なんで、きみが、そんな目に遭わないけんのぉ」
敵相手には強い彼らもお涙頂戴系の話には弱いみたいだ。
別に頂戴しようとしたわけじゃないけど。
「気にしないでください。みなさんが頑張って市の平和を守ってくれてるお陰で私はバイトができてます」
私渾身の笑みを頬に浮かべておいとましようとすればホークスが逃してくれない。
「Aちゃんがそんなボロボロになるまで働きよるんは俺らが平和を守っとるけやん」
ヒトの体からはそんなに水分が出るだと感心するほど泣いている。
かなりの地獄絵図だ。
「っあ、私バイトなんで失礼します」
私の手を握ったホークスの力が緩んだ隙に立ち去る。
真面目に勉強してたのに何でこんなことになるんだ。
時間を確認するとすでにバイトには遅れてしまうことが確定だった。
謝りの電話を一本入れて走る。
何でかわからないけど目が熱くてしかたがない。
鼻がツーンとして、息が上がる。
きっと走ってるからだ。そうだ。それ以外に何がある。
頼むから優しくしないでくれよ。
もう、諦めがついたの……
『私よりも悲しんでくれる誰かがいることは幸せである。』
現国の先生が言っていた言葉がふと頭をよぎる。
早くバイトに行かなきゃ行けないってわかってるのに足が思うように進んでくれない。
「優しくすんなよ！！」
吐くように言葉がせり上がってきた。
あのヒーローは嫌いだ。
温められた想いを冷やしたくて、バイトに行く。
ろうそくの火に息を吹きかけても中々消えない→←物理的八方塞がり
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作者名：yugi 0434 | 作成日時：2022年5月7日 23時
