過去の中 ページ13
パーカー1枚ではだいぶ肌寒くなってきた。
木々もその葉を緑から茶色や黄色に変えて、迎える冬を耐える準備をしているんだろう。
ベンチに座りただ目の前に見える風景を眺めて、時々足を組み替えながらさっき買った缶ビールを呷る。
行きかう人は私をチラッと見ては興味が無さそうに通り過ぎていく。
きっと失恋でもしたんだろう、哀れな女だ…、そう思われているに違いない。
ただの失恋だけなら、古臭いけど髪でも切ってさっぱりして、絶対幸せになってやるって意気込むことも出来るだろう。
じゃあこの心の傷は、どうしたら塞げるのか教えてほしい。
深く抉れ、いつまでもジクジクと膿んでまた抉れての繰り返し。
でも、きっと塞がなくていいんだ。
このまま、傷んだままで。
私が日本に帰ったと思っているだろうから、弄ばれたと怒ってくれていたらいい。
恨んで、憤って、あんな女なんて早く忘れてやるって。
なのに、なぜあなたはまた自分を追い詰めるような事をするの…
あんなにやつれて、今にも倒れそうな青白い顔をして…
それでも笑って、全力で踊って、苦しんで…
ユノを想って自然と流れてくる涙を止める事はだいぶ前に諦めた。
ポタポタと太ももに零れていく雫に、瞬きもせず黄昏に身を置く。
空っぽの胃にキツイ炭酸とアルコールを大量に流し込んで、酔っているのかどうかも定かじゃない。
ソヌ『 Aさん!』
ああ、見つかった。
ソヌ『またここに居たの。暗くなってきたし帰ろう?』
A『…ユノが、来てくれたの。』
ソヌ『ん?』
A『前に、夜中に私が勝手に家を飛び出した時、ユノが近所迷惑なくらい大きな声で私の名前を叫びながら、探しに来てくれて…』
ソヌ『……』
A『この公園まで聞こえてきて、ユノの、声が…。おかしいでしょ。子供じゃないのに…あんな、必死に……』
ソヌ『…とにかく帰ろう。』
フラフラと千鳥足な私を懸命に支えるソヌ君は、酔っ払いを介抱する可哀想な男の子に見えるんだろうな。
ごめんなさい、寄りかかってばかりで。
とても重いでしょ。
だけどもう、1人では立てないの。
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ぱる(プロフ) - うみさん» コメありがとうございます☆言葉じゃなく文字で気持ちを表したり伝えたりするのって、難しいなと書いてみて思いました。少しでも、何か残る作品が書けて良かったです!ありがとうございました(^^)また次作でお会いしましょ♪(´ε` ) (2013年8月30日 22時) (レス) id: cbea69b928 (このIDを非表示/違反報告)
ぱる(プロフ) - izumさん» コメありがとうございます!幸せな気持ちになってもらえるなんて…私の方こそ幸せですT^Tありがとうございます(^^)!辛い事も多いけど、まずは笑おうとユノが言ってるので、私も実践してます。必ず報われる時がくると信じて☆また次作でお会いしましょ〜♪(´ε` ) (2013年8月30日 22時) (レス) id: cbea69b928 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - ぱるさん、完結 お疲れ様でした♪本当に素敵なお話しでした!最終話、なんだか心にしみました(*^^*)ありがとうございました☆次の作品も是非、読ませて下さ〜い(^-^)/楽しみにしてます♪ (2013年8月30日 21時) (携帯から) (レス) id: e9b085f8f9 (このIDを非表示/違反報告)
izum(プロフ) - パルさん。私、今とっても幸せです。人は悲しい事や辛いことがあった分幸せになれるんですよね! 素敵なお話ありがとうございました。次のお話も楽しみにしてます☆ (2013年8月30日 20時) (レス) id: eda0a210ea (このIDを非表示/違反報告)
ぱる(プロフ) - ふっきーさん» 喜んでもらえて何よりです(o^^o)ユノと結婚の喜びを表現するのがなかなか難しいです。頑張りまぁす( ´ ▽ ` )ノ (2013年8月23日 23時) (レス) id: cbea69b928 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱる | 作成日時:2013年7月17日 23時