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『あー!!あなた、昨日屋上にいた女の子!』
「あたし、赤木晴子っていいます、えっと…」
『赤嶺Aです!よろしくね、ハルちゃん!』
ゆるりと目尻を下げて曇りのない笑みを浮かべたAに、晴子は照れたように笑い返した。
ハルちゃん、そう言って笑う彼女の笑顔には、人を絆してしまう力があるようだ。
しかし晴子の心の中には葛藤があった。それは勿論、晴子が思いを寄せる流川のこと。
あの日屋上で見たAと流川の間には、晴子には見えない何かが確かにあった。
その何かが、一体何だったのか。
晴子と同じく恋心なのか、それとも家族のような親愛か、はたまた、説明のつかない何かなのか。
「あ、あの…Aさん──」
「──どうだ!!これがテメーが玉入れ遊び部とバカにしたスポーツだ!!バスケットをナメるな!!!」
しかし、兄の怒気を含んだ大声に遮られて、それを聞くことは叶わなかった。
『相当熱くなってるね』
「お兄ちゃんはバスケットのとこになると人が変わっちゃうの、普段は優しいんだけど…」
「(ホントかよあの怪物が…)」
「小学校の頃からバスケ一筋で、全てをバスケットにかけてきたような人だから…」
そう言う晴子を見て、Aは一人目を伏せた。
幼い頃からバスケ一筋、そればかり考えて生きてきたような人をAも知っていたから。
そういえば、彼もこの勝負を体育館のどこかで見ているのだろうか。
『(るかちゃん…教室で寝てるかな)』
「くっそー…!!!あのルカワといいこのゴリラといい、どうしてこうバスケをやる奴に嫌な野郎が多いんだ!!!!」
顔を真っ赤にして息を切らす花道の口から出た彼の名前に、Aは一瞬ビクリと肩を跳ねさせた。
「あーっ!!ムカつく!!!!」と大声で叫びながら体育館の床を弾くように走る花道。
『わっ、すご!!速い!!!』
思わず歓声を上げてしまうほどのスピード。
『速いね、すごいね!!』とはしゃぎながら隣の晴子に言うも、晴子は困ったように花道を見つめるだけだった。
「スピードだけは超一流だな。だがそれだけではオレに勝てん!!!」
「ゼッタイ勝ァつ!!!!」
しかし体育館の床は、普通のシューズでは滑りやすい。
猛獣の雄叫びのような声を上げた花道が、足を引っ掛けて前のめりに倒れかかった。
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Uo(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます❕お褒めの言葉本当に嬉しいです😖ご期待に応えられるよう頑張ります!! (7月29日 20時) (レス) id: a616e905ad (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 絵うますぎませんか? え、うま ビビるほど上手い 尊敬します!! お話もとっても面白いです!応援してます! (6月22日 14時) (レス) @page5 id: c33439ae2b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» ありがとうございます❕たくさんのご感想に、私も日々活力を頂いています!!気長にお付き合い頂けると幸いです…!! (5月29日 2時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
生粋のまよらー(プロフ) - メープル3続編おめでとうございます!!これからも主様の投稿を心待ちに日々過ごして参ります!!!続編でもコメントします! (5月28日 20時) (レス) @page49 id: 3e4069aada (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» コメント、ありがとうございます❕仙道はのらりくらりという感じで掴みづらいキャラなので上手く表現できるか不安ですが、精一杯頑張ります!!温かいコメント、いつも本当にありがとうございます。とても嬉しいです😖 (5月28日 0時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Uo | 作成日時:2023年4月23日 1時