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興味ない。他当たれ。
悲痛なダブルパンチを食らった女子は、ポロポロと涙を溢して走り去っていった。
それはそうだ。悲しくて悲しくて仕方ないに決まってる。憧れの人から、"他当たれ"なんて。
背を向けた女子の涙などには全く揺らがない流川が眠たそうに頭を掻いて、自分も部活に向かおうと振り返る。
「あ」
「…お」
まずい。見つかった。
友達の幼馴染ってだけで別に知り合いじゃないのに、気まずい沈黙。
そのまま見つめあってる訳にもいかず、何とか頭の中で考えた言い訳を絞り出す。
「…別に、盗み聞きって訳じゃないから。たまたま…水泳場行きたかっただけ。水泳部だし」
「…」
「そうすか」とでも言いたげな、どうでもよさげな流川の表情がなぜか少し癪だった。
ああ、そうですか。どうでもいいですか。そうでしょうね。
普段だったら絶対このまま通り過ぎてるはずだ。だけどなぜか今は、言ってやると思ってしまった。
美和はぐ、と眉を寄せてから、横を通り過ぎようとする自分より大きな流川の身長を少し睨み上げた。
「…あのさ」
「?」
流川が目線だけ少し振り返る。
前髪から覗くその切れ長の目は、本人はそんなつもりはないのかもしれないけど、心臓が縮むほど冷たく見える。
両手の拳をぎゅ、と握って、美和が声を絞り出した。
「……もっと優しい言い方できなかったの?」
「……」
「……」
「…盗み聞きしてる」
「盗み聞きじゃない、聞こえちゃっただけ」
結果盗み聞きであることに変わりはないので少し苦しい言い訳だったけど、流川はまた「そすか」と興味なさ気に頷く。
「見えてたと思うけど、泣いてたんだよ。あの子。泣かせるまでする?普通」
「…あの人の友達?」
「違うけど、あれじゃ可哀想でしょ…!もっと他に言い方あったと思ったから──」
うまく言えず、語気にばかり力が籠る私に、流川は表情を変えないままさっき女子生徒が走り去って行った方を見て、首をさすった。
「…未練残すような優しい言い方で、無駄な希望持たせる方がカワイソウじゃねーのか」
「…」
無駄な希望。
そんな言い方ないじゃないか。自分のことを好きになってくれた人に。必死に思いを伝えてくれた人に。
って、なんで私はこんな意地になってるんだろう。
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Uo(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます❕お褒めの言葉本当に嬉しいです😖ご期待に応えられるよう頑張ります!! (7月29日 20時) (レス) id: a616e905ad (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 絵うますぎませんか? え、うま ビビるほど上手い 尊敬します!! お話もとっても面白いです!応援してます! (6月22日 14時) (レス) @page5 id: c33439ae2b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» ありがとうございます❕たくさんのご感想に、私も日々活力を頂いています!!気長にお付き合い頂けると幸いです…!! (5月29日 2時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
生粋のまよらー(プロフ) - メープル3続編おめでとうございます!!これからも主様の投稿を心待ちに日々過ごして参ります!!!続編でもコメントします! (5月28日 20時) (レス) @page49 id: 3e4069aada (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» コメント、ありがとうございます❕仙道はのらりくらりという感じで掴みづらいキャラなので上手く表現できるか不安ですが、精一杯頑張ります!!温かいコメント、いつも本当にありがとうございます。とても嬉しいです😖 (5月28日 0時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Uo | 作成日時:2023年4月23日 1時