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『どういうこと?』
「"オレはスラムダンクがやりたいんだ、こんなつまんねー部はもうやめる"…だとさ」
洋平の言葉に、Aの大きな瞳が更に大きく見開かれる。
"全国制覇"というキャプテンの言葉に力強く頷いたのは、部員の中では数人。
その数人の中に、彼はいたのに。
「スラムダンクの前に、アイツには身につけなきゃならんことが山ほどあったんだ。根性なしが…ルールも全く知らんくせに、」
赤木がそう小さく言ってから、シンとした体育館の空気を切り替えようと無理やり大きく声を張り上げた。
どよめく部員に練習を促す赤木の元に、晴子が眉を下げて体育館に入って来た。
桜木花道をバスケ部に誘ったのは彼女で、晴子なりに花道に対して責任や期待を持っていたのだろう。
「お兄ちゃん、あたし桜木君探してくる!!」
「ほっとけ晴子。あいつはああいう男だ」
「ちょっと厳しくするとすぐ我慢できなくなって逃げ出す。今までそうやって何人やめていったか…オマエも知ってるだろう」
木暮と彩子が黙り込む。
「桜木も所詮はあいつらと同じってことだ」
ボールを持って俯いたままそう溢した赤木に、体育館がまた静寂に包まれた。
そこに一人、ふわりと艶やかなメープルシロップが横切った。
その手には外履きを持っていて、シューズを脱いで体育館の端に寄せて置いた。
『ハルちゃん、私も探す。一緒に行こう』
「!!Aちゃん…!」
不安そうな眉を少し安堵に緩めた晴子に、Aふっとが微笑んだ。
『手分けして探そう。私は右、ハルちゃんは左』
「うん…!!」
体育館を出て、走り出す。
走るのは苦手だ。
ちょっと走っただけで私の脚は鉛みたいに重くなる。
たった十分走っただけで、私の喉からはヒューヒューと細い呼吸が漏れる。
息苦しいのは嫌いだ。呼吸が細くなると、酸素が足りなくなった脳が真っ白になって、クラクラする。
物心ついた頃から私は、全身で風を切るほど速く走れたことなんて一度もない。
それでも。
ハッハッと切れる自分の呼吸。私は頭の中でアップテンポなあの曲を再生する。
走り出した足が止まらない
行け、行け、私の両足!
桜木花道の元まで、今ならどこへでも走れるはずだ。
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Uo(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます❕お褒めの言葉本当に嬉しいです😖ご期待に応えられるよう頑張ります!! (7月29日 20時) (レス) id: a616e905ad (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 絵うますぎませんか? え、うま ビビるほど上手い 尊敬します!! お話もとっても面白いです!応援してます! (6月22日 14時) (レス) @page5 id: c33439ae2b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» ありがとうございます❕たくさんのご感想に、私も日々活力を頂いています!!気長にお付き合い頂けると幸いです…!! (5月29日 2時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
生粋のまよらー(プロフ) - メープル3続編おめでとうございます!!これからも主様の投稿を心待ちに日々過ごして参ります!!!続編でもコメントします! (5月28日 20時) (レス) @page49 id: 3e4069aada (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» コメント、ありがとうございます❕仙道はのらりくらりという感じで掴みづらいキャラなので上手く表現できるか不安ですが、精一杯頑張ります!!温かいコメント、いつも本当にありがとうございます。とても嬉しいです😖 (5月28日 0時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Uo | 作成日時:2023年4月23日 1時