基本が大事 ページ24
✳︎
自称"次期キャプテン当確男"の桜木花道が入部して、一週間が過ぎた。
本人の意気込みとは裏腹に、相変わらずコートの隅っこが指定席の桜木。
一方、鳴り物入りで入部したウワサのルーキー流川。
彼見たさに体育館に来る女子生徒の数は増える一方であった。
桜木はかなりイライラしていた。
そしたまた一方、マネージャーとして入部したAは、体育館を出てすぐの水道で部員の数分のスクイズボトルに水を汲んでいた。
500mlのボトルに、水と粉末は1:1.5。
この一週間見た感じでも湘北バスケ部はかなり運動量が多いし、夏に差し掛かったこの季節、油断は禁物だ。
運動中の水分補給で一番大切なのは、一度に大量に飲まないこと。喉が渇いたと感じる前に、こまめに水分補給することがスポーツ選手の鉄則なのだ。
『──はっきり言って努力は嫌いさ はっきり言って人は人だね』
フンフンと一丁前に鼻歌で前奏を奏でてから、最近聞いている曲を口ずさむ。
脳内で再生されるえっちゃんの可愛い声のように、私の歌声は炭酸水みたいに弾けている。はずだ。
そうだ、明日の朝はこの曲を歌って見せよう。
きっと彼は無表情な眉をピクリと動かして、黒々と長い睫毛が縁取った黒い瞳を、ちょっぴり驚いたように私に向けるはずだ。
『(…待てよ、私のえっちゃん顔負けの可愛い歌声に驚いて事故したらまずいな)』
スクイズボトルの中の粉末と水をかき混ぜるように振りながら、そんなことを真面目に考える。
その想像は大袈裟としても、ちょっと驚いた顔をした彼を思い浮かべて、Aはクスリと笑う。
走り出した足がとまらない
行け!行け!あの人のところまで
『(あの人…)』
えっちゃんは"あの人"って、誰のことを思い浮かべて歌うんだろう。
誰のところまで、風に背中を押していって欲しいんだろう。
一瞬、頭の中に風に靡く黒い髪が浮かんだ。
大きくて逞しい背中。黒い襟足から覗く、白い首筋。後ろからでも見える綺麗な睫毛。
「スカート踏んだ?」と毎回確認するセリフ。秋の風みたいに涼しげな声。
それと、これは秘密なんだけど、彼の太陽の光に透けるほど薄い耳は、
私が彼のお腹に回した腕に力を込めると、ピクピク動く。
多分、彼も気づいてない。私だけの秘密。
493人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Uo(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます❕お褒めの言葉本当に嬉しいです😖ご期待に応えられるよう頑張ります!! (7月29日 20時) (レス) id: a616e905ad (このIDを非表示/違反報告)
あ(プロフ) - 絵うますぎませんか? え、うま ビビるほど上手い 尊敬します!! お話もとっても面白いです!応援してます! (6月22日 14時) (レス) @page5 id: c33439ae2b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» ありがとうございます❕たくさんのご感想に、私も日々活力を頂いています!!気長にお付き合い頂けると幸いです…!! (5月29日 2時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
生粋のまよらー(プロフ) - メープル3続編おめでとうございます!!これからも主様の投稿を心待ちに日々過ごして参ります!!!続編でもコメントします! (5月28日 20時) (レス) @page49 id: 3e4069aada (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 生粋のまよらーさん» コメント、ありがとうございます❕仙道はのらりくらりという感じで掴みづらいキャラなので上手く表現できるか不安ですが、精一杯頑張ります!!温かいコメント、いつも本当にありがとうございます。とても嬉しいです😖 (5月28日 0時) (レス) id: 05f236e790 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Uo | 作成日時:2023年4月23日 1時