【呪術廻戦】呪われないでね 5

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「(やってくれたなあの馬鹿……)」








そうか、つまりそういうことだ。





Aが当然こんな事を言い出したのは天変地異でもおかしな術式でも熱のせいでもない。





彼女がこの件にここまで拘る理由が分かって、伏黒は心の中で守るべき善人であるはずの同級生を恨んだ。











「残念だったな。アイツと俺は違ぇんだよ」




『でも同じお年頃の健全な男子高校生でしょ？』



「オマエいつからスラスラそんなこと言うようになったんだ」










ちょっと前までは屋敷の中のものしか知らないような小さい女の子だったというのに。




『だって私もお年頃の女子高生だもん!』と、なぜか得意げに彼女が胸を張る。










「…そういう行為がすべてじゃねーだろ」




『どういうこと？』




「俺にとっての幸せは、フォルダに甘い物の写真が溜まったり、わざわざ元素記号を分かりやすくノートにまとめたり──」






「──そういう、しょうもないことで案外成り立ってて、それで充分満足してるってことだ」






『？』










何言ってんの？と言いたげに、Aが眉をひそめた。




それはそうだ。だって彼が言ったのは、彼とは到底関係ないようなものばかりだったのだから。






Aじゃあるまいし。誰が聞いてもそう言うはずだ。







『恵は甘い物食べられないし、元素記号なんて今更勉強する必要ないじゃん』




「……そうだな」














キスなんかしなくても、手すら繋いでなくても、





一般的な高校生が普通に経験するような恋人同士のあれこれなんか、何一つ無くても。








A。オマエと出会えて幸せだったと思って終われる人生だったら、俺は満足だよ。






恋人同士のようなことをAとしたいかしたくないかで聞かれれば、内心勿論したいと答えるだろう。そこはもう、男子高校生だもんね、と見逃してほしい。






だけど、これだって紛れもない本心だ。










『恵ってたまにおかしなこと言うよね』





「まぁ…でもあながち間違ってはないかもな」

















結局伏黒はこの後寮の自室で、あの流れで一回くらいキスしちまえばよかったな…と落ち込み完全なむっつりスケベを発揮するのことになる。








それでも大切な人に、自分自身を大事にとっておいてほしいと思うのも、立派な男子高校生の健全な欲望なのだ。












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