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Aの時とは騒がしさが全く違う車内。
今回はお互い、自分から雑談を続けるようなタイプではないようだ。
静かな車内で揺られながら、七海は無言で隣に座る伏黒について考えていた。
「(禪院家相伝の術式…確かに五条さんに目をかけられていたと言われるだけある術式の使い方、動き方──)」
そして戦闘の他にも、伏黒君について分かったことがある。
人のプライベートな部分を詮索するなど少しも趣味じゃないが、少し前に任務に同行した彼女が頭に残っているせいで、彼女と伏黒君を結びつけて考えてしまうのはもう仕方がない。
伏黒君について分かったこと。
彼は道端に咲く花に一々気を取られたりしない。
満開の桜の近くを通っても、感嘆の声を漏らしたりはしない。
頭が良いことは確かなようだ。
でも恐らく彼は花が、桜が特別好きなわけではない。
桜が好きな、彼女のことが好きなのだ。
彼女が一言、桜が枯れてほしくないと言ったから、どうにかしてやりたいと知識を身につけた。
他のこともそうなのだろう。
「桜が満開だ」と彼に言った時、桜の木を見上げた彼の目は一瞬桜より遥か遠くを見つめて「そうですね」と答えた。
満開の桜の向こうに、桜にも劣らぬ何かが彼の中にはあるのだ。
「そういえば前回久我さんと任務をご一緒しました」
「?そうですか」
突然切り出された話に、彼は何でもないように答えた。
でもそれ以上話を続ける様子のない七海に少し不思議そうな顔を向けて、
その後七海の様子を伺うように言った。
たった今話題に出された幼馴染が何かやらかした想像をしたのだろう。
「…あの…何かありましたか?」
Aが何か失礼なことを言ったか。
任務中に何かやらかして、迷惑をかけたのか。
『七海さんと任務に行った』とは聞いたが、何かやらかしてしまったとは聞いていないし、帰ってきた彼女もどこか怪我をしていた様子はなかった。
逆に怪我をさせた──?いや、だとしたら彼女なら、『どうしよう、怪我させちゃった…』と言ってきそうなものだが、
彼女ならやりかねないあらゆる想像を頭の中で繰り広げる伏黒に、七海はゆっくりと言った。
「…いえ、ただ、彼女はとても優しい人ですね」
「…」
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hn(プロフ) - 占いツクールの中でいちばんお気に入りの作品です。毎日読み返しています(笑) 無理なさらずに主様のペースで更新頑張って下さい、応援しています!大好きです!! (12月1日 14時) (レス) id: de7f57f322 (このIDを非表示/違反報告)
るる - いつも読ませてもらってます!今ユニバとコラボでハリドリとかあるんですけ、ユニバに行く1年ズと五条先生と夢主ちゃんでなんか書いて欲しい。お願いします!リクエストです。 (10月22日 16時) (レス) id: ce86603420 (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - kittoN0さん» コメントありがとうございます❕長らく返信せずに申し訳ありません。更新が無い間なのにコメントを残して下さり、数々のお褒めの言葉、お気遣い凄く嬉しいです。ご期待に沿えるような作品になるようとにかく地味に進めますので、どうぞよろしくお願い致します…!! (10月22日 1時) (レス) id: 64806ac4ef (このIDを非表示/違反報告)
kittoN0(プロフ) - こんなに綺麗で、儚くて、そんな作品は初めて出会いました。もうこのサイトにきてから10年ほど経ちますが、原作のあるお話とはいえ、あなたの言葉遣いや表現の描写がとても美しくて感動しました。またお時間があるときにでも更新してくださいね。 (9月21日 8時) (レス) @page23 id: c5fc518b9f (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - あんずまめさん» コメントありがとうございます❕アニメの渋谷事変が始まったら、また地道に進めようと思っています!気長にお付き合い頂けますと幸いです😖 (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま | 作成日時:2022年10月23日 0時