赤葦さん家は今日もほのぼの。その2

33*兄弟みたいな二人* ページ33

「おかーさーん！ただいま！」

「おかえり、将太。どうだった？」

「すごかった！宮さんもいてね！教えてもらったんだ！」

「よかったね。木兎さんに感謝だね」

「うん！」

玄関の鍵があくと、将太がものすごいスピードでリビングに入ってきた。
表情と勢いで充実した時間を過ごせたことがわかる。
全日本選手の練習を見ることができるなんて、なんて贅沢な子どもだろうか。これもご縁だな。

「おかーさーん！」

「お母さんはぼくとのお母さんじゃないからお母さんってよばないでよ！」

「おまえ、ミャーツムや影山はさんづけなのにな！あーあー、今日の練習、見学できたのは誰のおっかげかなー」

「ぐっ………」

「将太。本当に今日は木兎さんのおかげで見学できたんだからな。それはわかるよな？」

「うん…」

「赤葦………」

「だから、今日くらいはさんをつけよう。な？」

「うん」

「赤葦！！！！！」

「ぼくとさん、ありがとうございました」

「うっわー。なんか気持ちわりー！」

「ぼくとがさんつけろって言ったんじゃん！」

「もう今まで通りでいいや」

「木兎さん、将太は木兎さんが大好きだから"ぼくと"って呼べるんです。信頼と安心があるんです」

「そうか！そうだよな！赤ちゃんの頃から可愛がってるもんな俺！」

大笑いする木兎さんを見て「ぼくと、単純」と言いそうになった将太の口をふさいだ。
思ったことを口にすればいいというものではない。

「ねー、お母さん、おなかすいたー！」
「俺もー！」

「ご飯にしよっか。今日は香菜とご飯づくり頑張りました」

「ハンバーグとねー！サラダとねー！スープ！！」

「「やったー！」」

「手、洗ってきてね」

「「はーい！」」

将太と木兎さんは競うように洗面所へ行った。
本当に兄弟のようだ。

「将太に言ったんだけどなぁ」

「まぁ、木兎さんだからね」


* * *

2018・6・11

34*ババ抜き*→←32*未来がまぶしい*

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す