euphoria 【JK】 ページ1
俺がこの町に引っ越してきたのは、小学五年生のとき。
ヌナと出会ったのは、しばらくたってから。丁度学校から帰った時だった。
「こんにちは。引っ越してきた子?」
近くの中学の制服姿で、長い髪を揺らして話しかけてきた彼女に、少し胸が鳴った。
「は、い。チョンジョングクです。」
「私、カン・ウォナ。よろしくね。」
スクールバックについていたサックスのキーホルダーが揺れた。
思えば、この時すでに、ヌナのことが好きになっていたのかもしれない。
仲良くなるのに時間はかからなかった。気づいたときにはヌナは俺を「グク」と呼んでいたし、俺も「ヌナ」と呼び始めていた。(いや、呼ばされたといったほうが良い気がする)
たまにお互いの家に遊びに行って、近況を報告したり愚痴をこぼしたり。
気が置けない家族のような関係だった。
「ほんと、グクといると安心する。」
そう屈託なく笑うから、俺もあいまいに笑って痛む胸に気づかないふりをした。
この関係を壊したくない。
それがその時の俺の願いだった。
*
*
「ヌナ最近機嫌いいですね。」
中3の夏。いつもどうりヌナと談笑をしていた時。ふわふわとしたような雰囲気を感じて、なんとなく口にした言葉。それが失敗だった。
「ふふふ、やっぱり分かっちゃうのかぁ。実はね、好きな人がコンクール見に来てくれることになったの。」
その瞬間、分かった。
ヌナと結ばれることはこの先一生ないということを。
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作者名:てふ。 | 作成日時:2021年10月26日 20時