そらるさんが唯一｢ちゃん｣付けする女

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果たして、そらる君をこのままにさせて良いものだろうか。
他人じゃない、自分の家族だからこそ悩む問題。



人間の扱いというのは、いくら心理学を知り尽くしていたって難しい時もある。



今みたいに、私に過剰な愛を注ぐそらるくんに対し
もし私が冷たく突き放したらどうなるか。

そんなの、そらる君は私に捨てられたと、裏切られた気持ちでいっぱいになってしまう。


やんわり言っても、今みたいに聞いてくれそうにないし。




｢現状維持かな……。｣

｢ん？｣

｢ううん、なんでもない。｣






でも、このままだと私がやばいんだよなぁ。

そらる君に何から何までしてもらう生活がもう、5年以上。
だから私も、必要以上にそらるくんに甘えてしまうことが多くなった。


そう、私は人間だと言うのに日に日に退化している。




朝だって、そらる君が起こしてくれるようになり、料理だって洗濯だって掃除だってもっと出来なくなった。







｢ねぇ私、このままだとそらる君が依存対象になる。｣

｢……え？｣


｢人間は、2回目に家を買う時、１回めより条件が良い物件を選ぶでしょ？｣

｢……？｣

｢だから、例えば今は駅近の物件だから、次はもっと近くのところにしよう。とか、とにかく、人間は楽な方に流れていくの。｣

｢うん。確かに。｣






｢でもそれじゃあ、ダメなの。｣


｢うん｣




私がそらるくんの方を見ると、そらるくんはゆっくり頷く。







｢そらる君だっていつか、好きな人が出来て…結婚する。そしたら私、楽出来なくなっちゃうから……最悪の場合、死んじゃう。｣

｢………｣



｢依存してしまったら、抜け出すまでには時間がかかるの。本人の意思次第。だから私がこう思っているうちに……｣



｢俺は別にいいんだけど。｣




｢え？｣





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